人工知能の最前線~人口減・職の減少・ビジネスに与えるインパクト

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東京大学准教授・松尾豊氏×IBMビッグデータ&アナリティクスアーキテクト・中林紀彦氏×はこだて未来大学学長・中島秀之氏×スマートニュース会長・鈴木健氏
G1サミット2015
第5部 分科会C「機会か、脅威か?~人口知能が変える生活、ビジネス、社会~」

人工知能が急速な進展を遂げている。人工知能はどのような可能性を秘めているのか。ロボットやIOT(モノのインターネット)とつながることによって、我々を取り巻く生活やビジネスは、どのように変わるのか。はこだて未来大学学長であり人工知能学会フェローを務める中島秀之氏、世界屈指の人工知能であるIBMのWatsonを担当する中林紀彦氏、人工知能とWEB工学の研究で知られ、ドワンゴ人工知能研究所客員研究員に就任した松尾豊氏。人工知能のキーパーソンたちが議論する(肩書きは2015年3月20日登壇当時のもの。視聴時間1時間16分19秒)。

中島 秀之氏
公立はこだて未来大学 理事長・学長
中林 紀彦氏
日本アイ・ビー・エム株式会社
ビッグデータ&アナリティクスアーキテクト
筑波大学大学院 客員教授
松尾 豊氏
東京大学大学院工学系研究科 准教授
鈴木 健氏(モデレーター)
スマートニュース株式会社 代表取締役会長 共同CEO

【ポイント】
一般人による人工知能の定義は、外界に応じてふるまいを賢く変えること。専門家による人工知能の定義は、「人間のような」知能であること。私の場合それは「予測性」。人間の脳は、外界で次に何が起きるのかという「予測性」が極端に発達している。人工知能を作ることは、予測力が非常に高い機械を作ることと同義(松尾氏)

人間の左脳は分析的な思考力、言語理解などを掌る。右脳は認識、感覚を掌る部分で、学問的にもテクノロジー的にもこれから発達する分野。現在研究が進められている左脳の研究に右脳の研究をうまく使い分けることで、人工知能をもっと活用できるのではないか(中林氏)

人間を知りたいがために人工知能の研究をした結果、人間の素晴らしさを認識することに。人間は、状況の変化に応じて、何も見ていないかも意識せずに、その情報の要・不要を意識もしないまま瞬時に判断する「状況依存性」が非常に得意。一方のコンピューターは全部を見た上で、考えなければならない(中島氏)

AIの定義には2種類。1つは「人間のように理解し考える」もの。もう1つは「賢くふるまえる」もの。鳥のように飛ぶものがいいのか、飛行機のように早く飛べればいいと思うかの違い。今、世の中にでているものは飛行機型が多い(中島氏)

Googleなどで実際に使用され大成功を収めていることと、シンギラリティという概念によってAIは注目を集めた。『シンギラリティ・イズ・ニア』(レイ・カーツワイル著)も話題となった。もともとAIの世界では「Strong AI:人間と同じものを作れるし、そこを目指すべき」という理論と、「Weak AI:人間の知能を特別視せず、必ずしも人間を目指さない」という理論がある。シンギラリティは人間を遥かに超えて、自己増殖的に知能を獲得すること(鈴木氏)

コンピューターに欠けているのは身体性。注射をうつと痛いなど、教えなければならないことは山ほどある。コンピュータに身体や痛みについて教えなければ、人間と同じような知能にはならない(中島氏)

シンギラリティといったときには、圧倒的な知能プラス生命性を指している。人工知能が人口知能を生み出すことに、生殖の本能や進化の過程はない。ただ、AIが1つの固体として圧倒的な知能をもつ時代はすぐにくるはず(松尾氏)

人口と職の減少は、要するに、少ない人数で人類をやしなっていくということ。AIによって生産性があがり、働かなくても食べていけるのであれば、それでいいのではないか。ただ、身体性にまつわる、シェフや医者などといった微妙な感覚を研ぎ澄まさねばならない職は、最後まで残るだろう(中島氏)

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