スマホで支える『戦地医療』本格侵攻から2年…先細る“ウクライナ支援”に日本は【報道ステーション】(2024年2月19日)

2024/02/20 に公開
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東京都内で19日、日本・ウクライナの『経済復興推進会議』が開かれました。ロシアの侵攻開始から間もなく2年。日本は、ウクライナをどう支援していくのでしょうか。


■『がれき処理』など7つの分野で支援

ウクライナ シュミハリ首相
「きょう、両国間の協力の新しいスタートを切る日です。民間企業と投資家が、ウクライナ復興の中心的な役割を果たさなければならないということです」

岸田文雄総理大臣
「経済復興を進めることは、いわばウクライナ、日本、そして世界への未来への投資です」

日・ウクライナ経済復興推進会議には、両国の政府・企業関係者らが集まり、地雷対策・がれきの処理・農業の生産性向上など、7つの分野での支援が決まりました。


■遠隔診療で『戦地医療』支える

欧米の“支援疲れ”が指摘されるなか、官民挙げての復興支援を打ち出す日本。すでに動き出しているものもあります。それが、日本のベンチャー企業『アルム』が開発した医療ICT技術です。

アルム 坂野哲平代表(46)
「我々が今回、ウクライナ支援で送っている医療機器のセット」

ケースの中には、エコーや心電図といった医療機器に加え、スマートフォンが入っています。

アルム 坂野哲平代表
「こちらの医療機器を使った時、心電図の状態が、遠隔にいる医者を含めて全員が見えている状態に。診療現場で困った症例とか、非常に難しい場合に、いかに遠隔にいる医者がサポートしていくのかという仕組み」


■スマホで『専門医』が医療支援

戦争が長期化するウクライナ東部や南部では、医療施設が標的とされ、インフラも医師も不足。首都キーウの専門医とオンラインで結ぶ遠隔医療により、高度な治療も可能にしようというのです。

このシステムの核となるのが『Join』という医療関係者間コミュニケーションアプリです。日本では10年前から導入されています。

慈恵医大脳神経外科 村山雄一主任教授
「我々の病院は、全ての手術室がここで見られるようになってます。このような形で手術を見ながら、別の部屋の進捗を見ることが可能」

また、登録している日本全国の病院ともつながっているため、遠く離れた病院同士で映像を共有することができます。

この日、脳神経外科の手術が、横浜の病院で行われ、その道の名医である村山教授が遠隔支援をするといいます。

患者の男性は、頸動脈にプラークと呼ばれるコブのような隆起があり、血管が狭い状態に。このままでは脳梗塞を引き起こす危険があるため、血管を広げる手術を行います。東京では村山教授が手術を見守ります。

この手術ではまず、血管をバルーンで広げ、重要となるが『ステント』と呼ばれる金属製の網状の筒。これを固定して、血管を拡張させます。

慈恵医大脳神経外科 村山雄一主任教授
「(ステント)留置位置に関して指示を出したい。この範囲でステント留置したい。(Q.今、書いた図が共有されている)はい。治療戦略を一緒に共有できる」

横浜の病院では、その指示をリアルタイムで確認。赤く引いた線を参考に、ステントを置きます。

慈恵医大脳神経外科 村山雄一主任教授
「これがステンドが開き出したところ。今、留置できたので、予定通りですね」

手術はわずか30分ほどで終了しました。

慈恵医大脳神経外科 村山雄一主任教授
「(Q.もちろん現場の医師も優れた技術を持っていると思うが、専門中の専門である先生が(遠隔で)そこを見守っていて、適切に指示を出すっていうのは、医療現場の安心につながる)やっぱりジャッジメント(判断)でどうしても迷う場面って、それはエキスパートになってもある。そういった時に自分の方針がこれで正しいかどうか。そこ(遠隔)で確認をする作業というのは、医療安全の観点からも非常に高い」


■「こぼれる命をひとつでも救う」

医療現場を劇的に変えるICT技術は、戦禍にあるウクライナでどのように活用されるのでしょうか。開発した坂野代表は去年、林外務大臣(当時)と共にキーウを訪問。ウクライナ政府と協議を進め、遠隔医療のためのキットをすでに送っています。さらに、4月からの本格稼働を目指し、5人のウクライナ人医師が来日。遠隔診療のための教育を受けています。

ウクライナから来た医師
「日本の支援が、多くのウクライナ人の命を救うと信じています。日本の国民と政府からの応援を感じ、アルムの支援に感謝しています」

アルム 坂野哲平代表
「東部・南部のウクライナ地域にもう一度、医療をちゃんともたらして、こぼれ落ちる命をひとつでも救うというのを、官民あげてやっていきましょうと。医療は社会保障のなかの中核になるので、このような新しい医療システムで貢献できることは多々あると思う」


■日本ができる“支援”は

官民連携によるウクライナ支援は、医療分野だけではなく、7つの分野で打ち出されています。

(1)電力・交通インフラ等の整備
(2)汚職対策・ガバナンス強化
(3)地雷対策・がれき処理
(4)医療・教育など生活の改善
(5)農業の発展
(6)『新たなものづくり』の創出
(7)IT・ICT分野

【農業の支援】
ウクライナではダムが破壊され、農地に給水が困難な地域もあります。ここに、水を大量に含むことができる『EFポリマー』を使用して、干ばつを解消していく計画です。すでに現地に送られていて、今春から活用される予定です。

【“義足製造”の支援】
3Dプリントで義肢を製造する『インスタリム』によると、ウクライナで義足を必要とする人は少なくとも5000人いるといいます。そこで、現地の義肢製作所に3Dプリンターやソフトウェアを提供し、ウクライナ国内でビジネスとして発展していけるよう、支援を行うということです。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp