Learn Japanese Through Story (N5):フルヤノモリ/The Scariest Creature in the World

2021/11/28 に公開
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東北の民話『ふるやのもり』を #やさしい日本語 #SimpleJapanese でリライトしました。

【参考】
フジパン「民話の部屋」様
https://minwa.fujipan.co.jp/area/iwate_002/

【音楽/効果音】
甘茶の音楽工房様 http://amachamusic.chagasi.com/
音人様 https://on-jin.com/

【イラスト】
イラストAC様 https://www.ac-illust.com/

スクリプトーーーーーーーーーーーーーーーーーー
昔、山奥にお爺さんとお婆さんが住んでいました。二人はとても貧乏でしたが、とてもいい馬を飼っていました。
ある晩、泥棒が来て、馬小屋の梁に登りました。お爺さんとお婆さんが寝たら、馬を盗むつもりでした。
その晩、狼も、その馬小屋に入りました。お爺さんとお婆さんが寝たら、馬を食べるつもりでした。
雨が降っていました。お爺さんはお婆さんに言いました。
「お婆さん、世界で一番怖いものは何ですか」
「そうですね。泥棒ですかね」
お婆さんが答えました。それを聞いて、泥棒は嬉しくなりました。自分が世界で一番強いと思いました。
「泥棒が来て、私たちの馬を盗んだら困ります。お爺さんは、世界で一番怖いものは何ですか」
「そうですね。私が一番怖いものは、狼です」
お爺さんが答えました。それを聞いて、狼は嬉しくなりました。自分は世界で一番強いと思いました。
「そうですね。狼も怖いですね」お婆さんも言いました。
だんだん雨が強くなりました。
「ああ、もっと怖いものがあります」とお爺さんが言いました。
「何ですか」
「古屋の漏りです。あれが来たら、家の中が全部めちゃくちゃになります。怖い怖い。もうすぐ来ますよ」
それを聞いて、お婆さんも言いました。
「ああ、本当だ。今晩はきっと、古屋の漏りが来ますね」

実は「古屋の漏り」は、古い家の雨漏りのことです。雨漏りで家が水浸しになったら、家の中のものが全部ダメになります。
二人は急いで、雨漏りがするところに茶碗やお皿を置きました。

しかし、馬小屋からは何も見えません。
泥棒は考えました。
「フルヤノモリ? 聞いたことがない。泥棒より怖いものか」
狼も考えました。
「フルヤノモリ? 聞いたことがない。狼より怖いものが、もうすぐ来る…?」
狼は怖くなって、家へ帰りたいと思いました。
泥棒は、自分の下で何かが動きましたから、慌てました。馬が逃げると思って、その動いているものの上に飛び降りました。
狼はびっくりしました。
「フルヤノモリだ! フルヤノモリに捕まった!」
狼は慌てて走り出しました。泥棒は、自分が馬に乗っていると思っていますから、その耳をしっかり掴みました。
狼は怖くて怖くて、狂ったように走りました。しかしフルヤノモリは、ぜんぜん離れません。
やがて朝になりました。明るくなってから、泥棒はようやく、自分が乗っている動物が狼だと気が付きました。それで、慌てて木の枝につかまりました。しかし、その枝はすぐ折れて、泥棒は木の下の穴に落ちてしまいました。

狼がホッとして歩いていると、猿が来ました。狼は猿に言いました。
「フルヤノモリに捕まって、大変だったよ」
「フルヤノモリ? なんだ、それは」
「世界で一番怖いものだよ」
猿はさっき、人間を乗せて狂ったように走っている狼を見ていました。それで、フルヤノモリがただの人間だとわかりました。
「君がそんなに弱虫だとは知らなかったよ」
猿がバカにして笑いましたから、狼は怒りました。
「弱虫じゃない。じゃ、おまえが捕まえてみろ」
それで、狼と猿はいっしょに穴のところまで戻りました。
猿が穴の中を見ると、暗くて何も見えません。
「もういないよ」
猿は笑って、長い尻尾を穴の中に入れました。
泥棒は自分で穴の外に出ることができませんでしたから、「助かった!」と思いました。それで、猿の尻尾を思いっきり引っ張りました。
猿はびっくりして、慌てて木にしがみつきました。猿の顔とお尻は真っ赤になりました。それでも泥棒が放しませんでしたから、とうとう猿の尻尾は切れてしまいました。
それで、猿の顔とお尻は今でも赤いのです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーおわり