Interview Vol.01
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-- こないだまでLAにいたみたいですけど、何をしに行ってたんですか?
フクダヒロム 修行ですね。
ワシヤマカズキ メンタル的な。
サワダセイヤ 肉体的にもね。
ワシヤマ 結果、ハードすぎて痩せましたけど(笑)。
-- どういう流れで行くことになったんですか?
ワシヤマ 路上ライブをやってたらお金が貯まったんで、「行けるやん」つって行ったッス。
-- 路上で稼いだ金だけでLA資金を4人分も貯められたと。すごい。
ワシヤマ 動機はそれだけで、今のタイミングでしか行けないと思ったんで。
-- メンバー4人だけで?
ワシヤマ あと、レコーディングができる後輩のエンジニアとカメラマンと6人で行きました。向こうのストリートでフィールドレック……電源を持参して、路上でライブを録るっていうのをメインの目的にして。
-- ライブは何本ぐらいやったんですか?
ワシヤマ 5本ぐらいやって、あとはベニスビーチにあるStudio 4 Westっていうスタジオでレコーディングをやらせてもらえました。
サワダ すごかったですよ。スタジオがある建物の上に悪魔の銅像がめっちゃ飾ってあったり、禍々しくて雰囲気ありましたね。
ワシヤマ あと、ゴールドディスクとかプラチナディスクがたくさん飾ってあって。
ルワブ・デニス スティングとかビリー・ジョエルとか名だたるアーティストのね。
ワシヤマ 俺らをそのスタジオとつなげてくれた人がいるんですけど、そいつが俺らの隣のブースでジョン・メイヤーのツアーの仕込みをしてるっていう、そういうスタジオで2曲ぐらい録りました。
-- それはすごい!
ワシヤマ 向こうは音の作り方がピザでしたね。
サワダ ピザの上にさらにチーズをかける感じ。「そんなのあり?」っていう。
フクダ 日本人には考えつかないよね。「そんなことやっていいの?」みたいな。
サワダ 単純に、「お、気持ちいいからここの音上げたろー!」っていうやり方で。
ワシヤマ 向こうだとそれが普通なんだよね、きっと。
-- 向こうでのストリートライブの反応はどうでしたか?
ワシヤマ 日本とあんまり違いがなくて。もちろん、外国っぽい反応はあったんですけど、日本でやることとあまり変わらなかった。
フクダ 普通にウケてる感じだったね。
ワシヤマ 演奏中にチラッとジミヘンとかのフレーズを混ぜるとファッと盛り上がるっていう。
デニス アメリカは国民に黄金時代のロックが基礎教養として身についてるんですよね。
フクダ 通りかかったじいさんに、英語で「もうロックは死んだと思ってたよ。最高だったぜ!」って言われたり。
ワシヤマ それぐらい向こうの人はブルースのフレーズとか弾かないから、そういう意味では日本では得られない視線は感じられたかなって。
お客さんが無数にいるっていうのはライブハウスだとありえないじゃないですか。
そこだけッスね。歩行者の足をいかに止めるか、みたいな。――――
-- 確かに今、アメリカでロックの人気は落ちてますもんね。
ワシヤマ なんなら日本のほうが盛り上がってる。
デニス もはや珍しがられてた。
サワダ 「懐かしい!」って感じのね。ポリスメンもパトカーのなかから親指立てて、そのままビューって通り過ぎていったり。初日にも目の前にパトカーが停まって、「ヤバイ!」って思ったんですけど、ただ聴いてただけだったっていう。
フクダ しかも、「CDねえのかよ」って言われてね。
サワダ CD持ってきてなかったから怒られました。「ホワイ?」って。
-- へぇぇ~。
デニス 勤務中なのに(笑)。
-- 確かに(笑)。そもそもなんでサスフォーは路上でライブをしようと思ったんですか?
ワシヤマ 先輩のバンドがやってるのを見て、俺らも出来るんじゃね?って。それだけです(笑)。あと、名古屋のシーンがあまり盛り上がってなくて、路上のほうが盛り上がってるんじゃないかっていうぐらいで。ライブハウスでやるよりも路上のほうが得るものが多い、みたいな。
-- 何が違うんですか?
ワシヤマ お客さんが無数にいるっていうのはライブハウスだとありえないじゃないですか。そこだけッスね。歩行者の足をいかに止めるか、みたいな。最近、ありがたいことに事前に告知をするとめちゃめちゃ人が路上に集まってくれるんですけど、それも違うなって最近思ってて。だからたまに告知せずにやったりして、俺らのことを知らない人の足をいかに止められるかっていうことにチャレンジしてます。それってライブハウスだとあまりできないじゃないですか。
デニス ふらっと立ち寄るライブハウスなんてないですから。
-- 確かに。ライブハウスと路上で演奏とか気持ちの見せ方って変わってくるものなんですか?
ワシヤマ まず、聞こえる音が違いますね。ライブハウスは壁があるから音が返ってくるけど、路上だと音が飛びっぱなし。だから、俺にはサワダ氏のギターフレーズが聞こえないし、路上だとお互いの指板を見ながら何を弾いてるか把握しないといけないんですよ。だけどライブハウスだとその必要がないから気持ちがラクですね。路上のほうが必死です。
サワダ バスケにたとえるなら、ライブハウスは公式戦で、路上は3on3みたいな感じですね。
デニス 路上でやるとみんなそうやって演奏に困ってるから、俺は好き勝手にやっていいや~って感じなんです。
サワダ こいつ(デニス)にクッソもてあそばれるんですよ。
ワシヤマ 構図的にはデニスが運転席で、俺がボンネットに乗って方向を指示するんだけど、デニスが全然言うことを聞かないこともあるっていう。で、あとの2人が扉のない後部座席に座ってる感じで、「こいつらをいかに振り落とせるか」みたいな感じでやってます。
-- 振り落とそうとするんだ(笑)。
サワダ 落ちるか落ちないかギリギリでしがみついてるときにめっちゃいい感じになるっていう。落ちたら落ちたでそれはまた面白いし。
フクダ 普通に置いてかれるよね。
-- でも、振り落とすぐらいじゃないとスリリングさが出てこない。
ワシヤマ それぐらいのほうが面白くないですか?
デニス 身の危険を感じてるほうが生きてる気がする(笑)。
サワダ 面白いことに、お客さんの反応が一番いいのもそういうときなんですよ。「どうなる? どうなる? 行ったー!」って。それが楽しくてやっちゃうんですよね。
-- じゃあ、みんなの呼吸がバッチリ合った瞬間が気持ちいいっていうのとのはまた違うんですね。
ワシヤマ 全然違うッスね。誰も呼吸合わせようとしてないですもん。
サワダ 気持ち悪さが気持ちいい。
ワシヤマ みんな裏をかいて、呼吸をちょっとズラすんですけど、ズラした先で合う瞬間が一番気持ちいいかもしれない。
サワダ 「こいつら引っ掛けたろ」って思ってやったらバチッと合っちゃって(笑)。
ワシヤマ 「お前もそれ考えてたの? お前と同じ発想なの嫌だー!」みたいな。
知ってるヤツに対して音楽をやるのって飲み会みたいな感じなんですよ。
そうじゃなくて、「この商品どうですか?」って初めて会う人に見せて、箱を開けてみて「うわぁ、ヤバイ!」っていう反応を見るのが一番の醍醐味なんですよ。――――
-- そんなことをやっててお客さんまで置いてけぼりにはならないんですか?
ワシヤマ 置いてけぼりになってることにお客さんは気付いてないと思います。そこがSuspended 4thとして一番いいところかもしれないですね。みんな「失敗した」って顔をしない。だからお客さんも付いてこられる。
-- そもそも失敗じゃないんですもんね。
ワシヤマ そうそうそう。何をやっても正解です。
サワダ 一番の失敗はリハ通りにやることです。
ワシヤマ お! カッコいいこと言うやん。
サワダ だって、ちゃんとやった日って反省会になるじゃん。
デニス 確かに。
-- どういう反省会になるんですか?
サワダ 「今日、何も起きんかったね」って。
ワシヤマ 「何も起きんかったね」なんて反省会、ないですよね(笑)。売れるっていうことと自分たちのやりたいことの方向が真逆なんで、今後はそこをどうやってすり合わせるかっていうのが課題ですね(笑)。
デニス でも、そこを突き詰めたら、それがビジネスになる気がします。
サワダ そうだね。新しい……新しくはないか。古いことを今やってるだけっていう。
-- ミュージックビジネスの仕組みがしっかりできあがった今の時代に、どれだけ古いやり方を貫いていけるかって感じですよね。
デニス 歌舞伎みたいな伝統芸能にちょっと近いかもしれないです。
ワシヤマ 本来はこういう楽しみ方をするんだぜっていうことをどんどん見せていきたいですね。
-- ストリートのよさってどこにあるんですか?
ワシヤマ 知らないヤツしかいないってところですね。知ってるヤツに対して音楽をやるのって飲み会みたいな感じなんですよ。そうじゃなくて、「この商品どうですか?」って初めて会う人に見せて、箱を開けてみて「うわぁ、ヤバイ!」っていう反応を見るのが一番の醍醐味なんですよ。
サワダ 実演販売じゃん(笑)。
ワシヤマ そう。そういう感覚を味わいたくて音楽をやってるから。
デニス バンドが大きくなってストリートでやるのが難しくなっても、別の方法で実演販売的なことはやっていきたいし、それをやるときに「おお!」って驚かせるようなものをつくっていく自信はあります。
ワシヤマ 曲だけじゃなくて、ライブの運び方とかもね。歪んでるんですよね、性癖が(笑)。向こうから求められるのが嫌っていう。こっちから振り向かせるほうがいい。ライブハウスでもそういう感覚を与えられるようになりたいですね。
-- ライブハウスだからダメっていうことじゃなくて。
ワシヤマ ライブハウスでも新しいものを与えられるように、ストリートでその感覚を養いたいッス。今のライブハウスだとなんも生まれないんで、新しい形でやれたらなっていうことはいつも考えてます。
-- さっき、LAでフィールドレコーディングをしたって話していましたが。
ワシヤマ そもそも、路上でレコーディングするっていうのがアホなんですよね。まあ、普通のレコーディングッス。鈴木礼人 っていう、フィールドレコーディングだったら彼っていうぐらいのスペシャリストがいて、彼を中心にいかにストリートっぽく録れるか挑戦したくて。
デニス 信号機の下にマイク立てたり。
ワシヤマ そうそう。あと、歩行者がいるほうにマイクを向けて、自転車がブレーキかける音まで録ったり。
-- 環境音も敢えて録って混ぜるっていう。
ワシヤマ 楽器の音だけなら普通のスタジオで録ったと思うぐらいのクオリティなんですよ。その上に信号とかの音をふりかけるっていう。フィールドレコーディングであそこまで録れるバンドは俺ら以外地球上にいないと思います。
Vol.02へ続く...
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6弦の21フレットを使うバンドは多分、Suspended 4thだけです!――――
-- では、話は前後しますが、結成の経緯を教えてください。
サワダ 最初は俺とワシヤマがライブハウスで出会うんですけど、その頃、彼はシューゲイザーっぽいバンドのリードギターをやってて。
-- シューゲイザー。意外ですね。
サワダ でも、一人だけハードロックを弾いてたんですよ(笑)。彼だけディレイもリバーブもかかってないすっげードライな音で速弾きしてて、「なんだ、こいつ!」って気になって声をかけたら意気投合して、「バンドやろう」って話になりました。それで、今のドラムとベースとは別のメンバーと5年前ぐらいから活動を始めて、2年ぐらい経ったときにベースが辞めることになって。そんなときにvineでフクダがめちゃくちゃすごい高速スラップの動画を上げてるのを見て、「こいつ、おもしれえ!」ってメールを送って、「サポートでいいんで」ってお願いしたら入ってくれました。フクダは元々ラウド畑にいたので、そういうテイストを取り入れながらまた2年ぐらい活動を続けてたときに今度はドラムが辞めて。それで「またメンバー探さなあかん」ってことでYouTubeを見てたら、デニスがドラムを叩いてて、その動画を撮ってる場所がワシヤマが住んでる町の隣にある市営スタジオだったんですよ。それで「ヤベェ!」ってなって、メールで「お疲れさまです。当方、路上ライブをやっておりまして……」ってメールを送って。
デニス それで、「路上ライブなら面白そうだな」と。それまではライブハウスで活動してたんですけど、そういう話を聞いて「いいじゃん」と思って曲を聴かずに「やります」って返事をしました。
サワダ え、聴いてねぇのかよ!
フクダ 聴いてなかったんだ(笑)。
サワダ よう入ったね! ありがとう! まあ、それで彼が入ったことによって、それまではポップでキャッチーな売れ線の音楽をやってたんですけど、「これなら俺らのやりたいことやれんじゃん」ってなって今に至るっていう。
ワシヤマ デニスが入るまでは、みんなやりたいことが別にあるような状態だったんですよ。
サワダ ルーツがみんなバラバラだからね。
ワシヤマ それを上手くまとめるには、「いつもどおりじゃダメ」っていうジャズの精神を持ってるドラムがいないとダメだと思ってたから。でも、なかなかそういうことができずにいたところに、たまたまデニスっていう精神がジャズなヤツが入ってきたから、「これなら多分、みんながやりたいことをやっても誰かがフォローできるな」って。ジャズって何が起きるかわからんっていうのが楽しいんですよ。
サワダ じゃあ、俺らはジャズバンドなんだね(笑)。
-- 精神が、ね(笑)。
デニス ジャズメンタリティバンド。
サワダ&ワシヤマ ジャズメンタリティロックバンド!
サワダ それだ! これからそれでいこう!
ワシヤマ 嫌だよ~。雑貨屋とかで流れそう(笑)。
サワダ じゃあ、やめよっか。パンクバンドっすわ(笑)。
-- ワシヤマさんは元々、津軽三味線をやってたそうですね。
ワシヤマ やってました。高校に入るぐらいまで続けてて、愛知県内でいろいろ営業をやったり。一番大きいのだと、吉田沙保里さんの祝勝会で弾いたこともあります。でも、今は全然面影ないですね(笑)。
サワダ 新曲でウィーン!って弾くところは三味線ぽいと思ったけど。
ワシヤマ ああ、そうだね! あと、レギュラーチューニングで6弦の21フレットを使うバンドは多分、Suspended 4thだけです! ……これ、見出しにしてください。
-- 見出しとしての引きが弱い! そこに引っかかる人、ほとんどいないから(笑)。
ワシヤマ まあ、ニッチな人が喜べば(笑)。実際、ツイッター見ると「ヤベェ! 6弦の21フレット使ってるバンドがいる!」って気付いてるヤツがいるんですよ。
-- そして、そのあとハードロックにハマるんですよね。
ワシヤマ そうですね。高校のときの音楽の先生がめちゃめちゃハードロック好きなお兄さんで、その人にだいぶ影響を受けました。70年代とか80年代のロックをめちゃめちゃ聴かされて、「三味線よりもハードロックのほうが楽しい!」って。実はその頃、メロディック・パンクのバンドでドラムをやってたんですけど、名古屋の藤が丘にあるMUSIC FARMっていうライブハウスでWANIMAと2回対バンしました。だから、サタニックでまたWANIMAと対バンみたいな形になったのは感慨深かったですね。俺のルーツはそんな感じです。
-- サワダさんは?
サワダ 俺はバンプ(BUMP OF CHICKEN)から入って、ハイスタを通って、ミッシェル(THEE MICHELLE GUN ELEPHANT)を知って、「これだ!」ってなってからはずっとギターをジャカジャカやってます。
-- そして、フクダさんのルーツはマキシマム ザ ホルモン。
フクダ ホルモンとレッチリ(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)っていう、スラップベーシストの典型的な入り方をして、そこからどんどんラウドな方向に行ったって感じですね。Crossfaithとかめちゃめちゃ聴いてました。だからサタニックでの対バンは感慨深かったですね。
最近の音楽を聴いて「なんだこりゃ!?」みたいな。「ドラムを楽器として叩いてるヤツ、一人もいないじゃん」って。――――
-- デニスさんのルーツは、ディープ・パープル、ツェッペリン、ザ・クリーム。20歳なのに趣味が渋いです。
デニス そういう60年代のロックから入って、そこから遡って30年代ぐらいのブルースとジャズに行き着いて、そこからまた60年代のジャズに戻ってきたって感じですね。最近は80年代のJ-POPを聴いてます。
-- まだ80年代なんだ(笑)。
デニス そうです。「楽しいなあ!」みたいな。「時代が変わってきたな!」って感じです。それまでは70年代以降の音楽を聴いてなかったので。
-- もう2020年になろうとしているのに(笑)。
デニス ちょっと悲しいですね。俺の青春時代がどんどん遠くに。
-- なんでディープ・パープルだったんですか?
デニス ラジオで聴いたんですよ。そのときにはもうドラムを始めてたんですけど、「あ、このドラムは違う」って。そんな感じで、ドラマーはジャズを通ってる人しか知らなかったから、最近の音楽を聴いて「なんだこりゃ!?」みたいな。「ドラムを楽器として叩いてるヤツ、一人もいないじゃん」って。
ワシヤマ 尖ってんな~!
サワダ いいぞー!
ワシヤマ こういうメンバーが揃って同じようなことをするのって無謀じゃないですか。多分、できないッス。
-- 納得しました。そして、2年前に今のメンバーになって、状況が変わったのが去年、「ストラトキャスター・シーサイド」のミュージックビデオが公開されたタイミングで。
ワシヤマ そうですね。某バンドの感じを真似たビデオなんですけど。ポルカ某、ドット某……。
一同 (笑)
ワシヤマ フォントまで真似して。
サワダ だから早く本人にお目にかかって……
サワダ&ワシヤマ 謝りたいッス。
一同 (笑)
-- 何の気なしに真似を?
ワシヤマ こんなにウケると思ってなかったんですよ。最初はバンジージャンプをするビデオを撮る予定だったんですけど。
デニス ゴーカートに乗ったり。
サワダ けっこうギャグのつもりで作った曲だったから、ミュージックビデオも音楽と全然関係ない映像を合わせようと思ってたんですけど、映像監督の人が「いやいやいや、この曲カッコいいよ!」って言ってくれたので、見せ方を変えてつくってみたらバズっちゃった。
デニス 「ポルカドットスティングレイならこんな曲を書くでしょう」みたいなテンションだったんですけど、俺がびっくりしたのが、俺らが「ストラトキャスター・シーサイド」を出した後に彼らが出した曲が「ストラトキャスター・シーサイド」にけっこう似てて。
サワダ ああ、「パンドラボックス」な。ギターがすげぇカッティングする曲。
ワシヤマ だから、絶対俺らは仲良くなれるはず!
サワダ 思考が似てるよね。
ワシヤマ そう!
-- 彼らにシンパシーを感じてるんですね。
サワダ リスペクトしてますよ。
ワシヤマ 俺ら的には「ギャグ」って言ってますけど、「こいつら尖ってねぇ」って思われたくないからそう言ってるだけで、めちゃめちゃリスペクトしてます(笑)。
-- そして、サスフォーは音楽だけに集中してるかと思いきや、フェスを主催する行動力もあるところがいいですね。昨年、ストリートミュージシャンが出演するフェス、<ストリートミュージシャンサミット>を名古屋の路上で開催しました。
ワシヤマ 行動力っていうか、俺、ふと思いついたことをすぐに口にしちゃうクセがあって、それに対して賛同してくれる人が多すぎたって感じですね。だから、俺に行動力があるんじゃなくて、俺の周りが行動力ありすぎる。
サワダ そうだよね。みんな、神輿かつぎがちだよね(笑)。
ワシヤマ そうそうそう(笑)。だから、いろんな分野のスペシャリストが自分の周りにたまたまいて、それで成り立ったフェスだったと思います。恵まれてただけで、行動力があるわけではないです。
-- じゃあ、何か大きなムーブメントを起こしたいっていう理想があるわけでもなく?
ワシヤマ ああ、そういう理想はあって、そのなかから実現しなさそうなことをポロッと言ったら、サササッてみんなが集まってきて、「やろうやろうやろう!」って。
-- やってみてどうでしたか?
ワシヤマ いやぁ、しんどかったッス。
サワダ 演者が運営やるもんじゃないなと思いました。
デニス 「いいじゃんいいじゃん、やってやろう!」っていう時期が3ヶ月ぐらい続いて、残り1、2ヶ月になって急に現実に直面して、「あ……大変なことをしているぞ……」って(笑)。
-- 気付いたときにはもう遅かったっていう。
サワダ やるしかなかったっていう。
-- そこでピザオブデスのスタッフと出会ったんですね。どんな出会いだったんですか?
ワシヤマ 本当に唐突ッス。いきなりおっさんが来て、「誰だ!?」と思ったら、「ピザオブデス!?」って。そのときは「ああ、ありがとうございます」みたいな感じだったですけど、内心、「ヤベェ!」って。それですぐにメンバーのところまで話しに行って、「ヤベェの来た! ヤベェの来た!」って。
サワダ 俺は本当にハイスタを聴いてたので、「ええ~!」って。しかも、そのフェスで俺がピザオブデスのTシャツを着てたのがスタッフの方が俺らに声をかける後押しになったっていう話をあとで聞いて、家に帰って号泣でしたね。
ワシヤマ 泣いちゃったの!?
サワダ いや、泣いてない。
一同 (笑)
-- 声かけられてどう思いましたか?
サワダ 「(俺らの音と)合うの?」っていうのが第一印象ッスね。
ワシヤマ 俺はめちゃめちゃ合うと思ってたけどね。
デニス 俺も合うと思ってた。プロジェクトとして成り立ちすぎて怖かったッス。
-- そこまで感じた理由は?
デニス サスフォーのロゴとピザオブデスのロゴの雰囲気が似てるし。
サワダ それは俺が意識して似たようなヤツを作ったからだし!
デニス 俺らのCDにピザオブデスのロゴが載ったら絶対カッコいいなと思った。
ワシヤマ でも、一番は心に通じるものをめちゃめちゃ感じたからですね。
サワダ DIY精神。
ワシヤマ これができるチームってなかなかないと思う。
サワダ このチームが会社だっていうのがすごいよね。
ワシヤマ これまでもそういうところに足を突っ込みたかったけど、なかなか決め手がなくて、そんなときにたまたま来たオッサンがピザオブデスだったっていう。
-- レーベルの音のイメージよりも、精神性の部分に惹かれたんですね。
ワシヤマ ああ、そうですね。自分たちも実は人情でやってる部分があるバンドなんですよ。「あいつとはやれるけど、あいつとはやれない」っていうのがめちゃめちゃある。そういう部分でもマッチングしたっていう。
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Interview Vol.03
ストリートでやることを前提に曲をつくって、CDにして、それがライブで変わっていくことまで考えてます。ストリートで演奏するためにつくってるんじゃなくて、ストリートで成長させるためにつくってる。――――
-- そして、初の全国流通盤となる『GIANTSTAMP』が7月24日にリリースされますが、これはリリースが決まる前から制作してたんですよね?
ワシヤマ そうですね。レコーディングは4月末には終わってて。
-- サスフォーの曲は、ストリートでやることを前提につくってるんですか?
ワシヤマ もっと言うと、ストリートでやることを前提に曲をつくって、CDにして、それがライブで変わっていくことまで考えてます。ストリートで演奏するためにつくってるんじゃなくて、ストリートで成長させるためにつくってる。
サワダ CDに入ってるのは、あくまでもプロトタイプって感じです。
ワシヤマ 普通のバンドだったらCDに入ってるのがゴールって感じだと思うんですけど、うちはそこがスタート地点。
サワダ そこから熟練度を上げていく感じ。
ワシヤマ そうそう。今の時代って曲をぼんぼん書いて、それをライブでやって、次のアルバムをつくって、みたいな流れだと思うんですけど、それには違和感があって。曲は育てていくほうが楽しいでしょうっていう気持ちで毎回つくってます。
-- 世間で一番多く聴かれるであろうCD音源のイメージから、ライブでの演奏が離れていくことに全く躊躇がないと。
ワシヤマ それが芸術性だと思ってるんで。
-- あと、サスフォーの曲はどこを切り取っても飽きさせない工夫がしてありますよね。
ワシヤマ まさにストリートですよ。サタニックでもセットリストは決まってたんですけど、3曲目に急遽「ストラトキャスター・シーサイド」を入れたのも、それと似た感じなんですよね。
サワダ 本当はもうちょっと難しい感じの曲をやる予定だったんですけど、ライブ中に変えることにして。
ワシヤマ あのとき、急遽「ストラトキャスター・シーサイド」をやろうとしたマインドがそのまま作品にも出てるんだと思います。ここで中だるみするぐらいならセットリスト変えたほうがいいでしょ、っていう。
-- それはワシヤマさんが指示するんですか?
ワシヤマ まあ、自分が指示はしてるんですけど、みんなも同じことを思ってるんですよ。
デニス 「こっちもそのつもりだったし」みたいな。
ワシヤマ あのときもみんな準備できてたもんね。
フクダ 俺もスラップする用のエフェクター踏んでたもん。
-- まさに阿吽の呼吸ってやつですね。あと、アルバムを聴いて思ったのは、4人全員が主役だなと。
ワシヤマ それはずっと狙ってるッス。
サワダ 「アベンジャーズ」みたいな。みんなヒーロー。
デニス 自分が一番敵を倒したいってみんな思ってる。
ワシヤマ そういうふうにしておけば、いつSusepended 4thが終わってもみんな食っていけると思うんで。
-- そこまで考えてるんだ。
ワシヤマ そこでしかない。
デニス アラフォーになって「ストラトキャスター・シーサイド」はできない。
ワシヤマ やれん! やれんやれん!
サワダ やれんなぁ~。
デニス ボサノバアレンジでしかできないッス(笑)。
ワシヤマ 「あいつら、丸くなったなぁ」つって(笑)。だから、個々の力があるほうがバンドとしての息は結果的に長くなるのかなと。
-- 今回の収録曲はどういう基準で選んだんですか?
サワダ バラエティ豊かな、聴き応えのある感じにしたいなと思って。サスフォーのいろんな面がわかると思います。
デニス 俺は「ヨンヨンゼロ」を作曲したんですけど、そのときちょうどチャゲアスにハマってたからそういう曲をつくろうと。
ワシヤマ 最初のキーがAなんですけど、Aって周波数が440ヘルツなんですよ。だから「ヨンヨンゼロ」。クソテキトー。
サワダ 3曲目の「97.9hz」もね。
ワシヤマ 最初に出す音がローGで、これも周波数が97.9ヘルツなのでそういうタイトルになりました。
-- 曲タイにそこまでこだわりがないんですか?
サワダ 曲によりますね。「GIANTSTAMP」はけっこうこだわって付けたし。
ワシヤマ この曲は世の中にないフレーズにしたいっていうことで捻り出しました。
サワダ でも、自然と名は体を表すみたいな感じになったよね。アメリカに行く前に書いた曲なのに、俺らがアメリカ行ったときのテーマソングみたいになっちゃった。
-- ああ、確かにそんな感じの曲ですよね。
ワシヤマ 本当は俺がローンを組んでビンテージギターを買ったときの曲なんですよ。だから、<クソデカい契約印>っていう意味のタイトルになってる。
サワダ 「ちょっと気になって覗いてみたらもう戻れないぜ」っていう歌詞は、ビンテージギターショップに入った瞬間のことです。
ワシヤマ そのギターは150万したんですけど、ローンが通ったときに冷や汗をかいた感じを表現したくて。ハンコ自体は小さいんだけど、俺にとってはすげえデカく見えたっていう曲です。今回はアルバム全体的には曲の幅が広いし、つくってるときはだいぶリスナー寄りの感覚になってたので、次に出すときはもっとエゴを出したいなと思ってます。今回はちょっと甘いかな。
サワダ 甘いよね。優しくしちゃったね。
デニス 「これがSuspended 4thです……今のところは」って感じです。
サワダ でも、いい曲揃いだよね。
-- 「ヨンヨンゼロ」とか「think」のようなミドルの曲は、メンバーと話し合ってアレンジするんですか?
ワシヤマ いや、俺が書いた曲は全部初見の状態でメンバーに渡してるんで、なんにも話し合ってないです。
デニス どの曲もそうです。
ワシヤマ 一回聴いてもらって、「じゃあ、よろしく」みたいな。
デニス このアルバムは違いますけど、時々あるのは、レコーディングの日の朝5時に曲が上がってきて、「ええ~」って思いながら録ったテイクが使われるっていう。
ワシヤマ でも、そういう対応力も音楽業界で生きていく上では絶対に必要な能力だと思うから、そこも見越してやってるッス。
-- アッパーな曲だけではなく、ミドルな曲もメロディがよくてしっかり聴かせられるっていうのが恐ろしいですね。
ワシヤマ むしろ、こういう曲のほうが得意かもしれないですね、フクダくん以外は。
フクダ 俺はこういう音楽を通ってきてないから、むちゃくちゃ苦手です。無理やりレベルアップさせられてる感じです。
サワダ でも、今回のアルバムの聴きどころはベースなんですよ。ベースしか耳に入ってこないぐらいフレーズが印象的で。
ワシヤマ ギターいらんやん、みたいなね。
サワダ マジで。どんどん俺がラクになる。
フクダ どんどん俺がしんどくなる(笑)。
ワシヤマ このアルバムの曲を演奏するのが一番しんどいのはフクダくんだと思うよ。
フクダ 本当にしんどいよ。
サワダ 早くライブでやりたいね!
フクダ 俺はやりたくねえ!
みんな何も言わないけど、今も終わりに向かってる感じはしてて。――――
-- 「97.9hz」の<30秒のスラップを聴け>っていう歌詞の遊び心もいいですよね。
ワシヤマ あの曲はこいつにスラップをさせるためだけに1時間ぐらいでつくって、「じゃあ、スラップやれよ」みたいな。
フクダ 「やっとキタ!」って感じでした。でも、めちゃくちゃ難しいんですよ。
サワダ この曲は一番度肝抜かれるんじゃないかな。
デニス 中高生が好きそう。みんなコピーしたくなるはず。
ワシヤマ 難しいぞぉ!
デニス 本人でも弾けるか怪しいもんね。ドラムは絶対できないッス。
ワシヤマ このバンドは耳コピが難しいんですよ。俺、メンバーには弦の指定までしてるんで。「この弦で弾いて」って。だから、マジでスコアがないと再現できない。
-- ワシヤマさんが曲をつくるときは、完璧に近いところまで作り込んでるんですか?
ワシヤマ そうですそうです。「ここは絶対グリスして」とか、「これはこのポジションで弾きたくなるけど、ここで弾いて。じゃないとローが出ないから」とか。
サワダ それを一度やってみた上で崩していく感じですね。
-- ああ、細かく指定はするけど、忠実にやってほしいというわけではないんですね。
ワシヤマ じゃないッスじゃないッス。変えたほうがよかったらそれはそれでいいし。運指って面白くて、しんどい運指のほうがカッコいいんですよ。
サワダ コピーしてくれてる人はいるけど、それを見ると「弾けてるけど違うんだよな~」みたいなことは思っちゃいますね。正解は教えないけど。
ワシヤマ 特にデニスなんてね。
デニス 「違うよ~。まあ、でも、いいんじゃない?」みたいな。
ワシヤマ 「コピーしてくれてありがとね」ぐらいの。
-- 上からな感じで(笑)。ところで、今後の目標はあるんですか?
ワシヤマ 各々が一人で活動できるぐらいの状況にして、バンドをいったん活休したいです。
デニス みんながサスフォーのあとに何をするのかが楽しみです。
ワシヤマ そうそうそう。みんな何も言わないけど、今も終わりに向かってる感じはしてて。それがいつになるかはわからないけど、一度バンドから離れて、各々活動して、バンドシーンがどういうものになってるか俯瞰で見るのが楽しみです。だから、ずっとステージに立ちたいっていうよりは、早く結果が見たいっていうか。それで活動をいったん区切ってしばらくしてから、みんなで「音楽業界終わってきたね」「もう一度やってみる?」「小銭稼ぎする?」みたいな話になって復活するのが一番いい。
サワダ ああ~、いいな~。そういう集まり方したいな~。ウェーイ!
-- 今日、話を聞いてて感じたんですけど、サスフォーってほぼ全員挑発的なところがありますよね。
ワシヤマ ははは!
サワダ すいません!
-- いや、いいんですよ、褒め言葉です。
デニス 挑発っていうか……ライバルがほしい。
-- だから、そういうところだって!
一同 (笑)
Interview by 阿刀大志