【動画】イージス艦「あしがら」心臓部に初潜入 弾道ミサイル防衛の最前線(2022年11月23日)

2022/11/23 に公開
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北朝鮮などからの弾道ミサイル防衛の最前線にいるのは、海上自衛隊のイージス艦です。そのイージス艦の心臓部に、初めてテレビカメラが入りました。

 あしがら乗員:「早期警戒情報受信しました、配置に就きます。対BM(弾道ミサイル)戦闘用意!」「目標については領域内に弾着します、対処します」「対BM戦闘、SM3攻撃始め!」「SM3発射!」

 海上自衛隊のイージス艦「あしがら」。

 日本の周辺海域で活動している主力イージス艦8隻のうちの1隻です。

 イージス艦の主な任務は弾道ミサイル防衛です。

 この日本のミサイル防衛は、北朝鮮などから発射された弾道ミサイルを、いち早く探知し、アメリカ軍と協力しながら迎撃する任務です。

 万が一、撃ち漏らした場合は、地上に配備されている、ミサイル迎撃システムのPAC3が対応するという、いわば2段構えの迎撃態勢を敷いています。

 「あしがら」は長崎県佐世保基地を母港としています。乗員はおよそ250人。

 今回、3日間の航海に、取材班が同行しました。

 九州の南の大隅海峡を抜け、四国沖に。

 そこから東京湾へ向け北上していくルート。

 イージス艦は、護衛艦のなかで、最も戦闘能力が高い艦船のうちの1つです。

 そのため、様々な攻撃能力を保有しています。

 イージス艦の最大の特徴の弾道ミサイル防衛は、こちらからミサイルが発射されます。

 奥に見える8角形のスパイレーダーを使ってミサイルを命中させるということです。

 また、弾道ミサイル以外の対空、戦闘機などにはおわん型のイルミネーターと呼ばれるレーダーを使って調整しながらミサイルを誘導させるということです。

 イージス艦は、垂直発射装置を使い、SM3と呼ばれるミサイルなどを発射することができます。

 あしがらの装備品について、ナンバー2の田村副長に案内してもらいました。

 田村副長:「全体で96のセルがあります」「(Q.最大で96発撃てる?)その通りです」「(Q.今、中に入っているものもある?)もちろん、本艦常に任務に備えておりますので、今出港を命じられても任務に対応できる状態になっています」「(Q.実弾が入っている?)その通りです」「(Q.弾道ミサイル防衛のSM3も入っていますか?)その通りです」「(Q.SM2も入っています?)入ってます」

 SM3は、スタンダードミサイル3の略で、弾道ミサイルに対して防衛でき、SM2は、戦闘機や、戦闘機から発射されたミサイルなどを迎撃することができます。

 さらに―

 田村副長:「遠距離の潜水艦に対して魚雷の後ろにロケットが付いているものがあるのですけれども、それはこの垂直発射装置から発射します」「(Q.ちょっと開けてみても良いですか?)特別に開く様子をご覧頂きます」

 潜水艦に対して発射できるミサイル(VLA)も搭載できるといいます。

 このVLSと呼ばれる垂直発射装置は、実際の発射の際、一気に扉が開くといいます。

 今のところ、3種類のミサイルを搭載することが可能です。

 こちらの巨大な筒状のものは、ファランクスと呼ばれる高速機関砲。

 1分間におよそ4500発、自動で近くに来た敵を追尾して攻撃できます。

 手動で切り替え、水上のターゲットを撃ち落とす事も可能だといいます。

 こちらがチャフと呼ばれる敵の攻撃を誘導する、いわばおとりのロケットです。戦闘機で言うところのフレアですね。これが12、反対側にもあるので24発撃てるということです。

 また―

 甲板上にある大きな配管、これは魚雷の発射管で、潜水艦に対応するということです。回転して海に向かって撃ちます。

 魚雷は左舷に3発、右舷に3発、合計6発撃てるといいます。

 またSSM、艦対艦ミサイルも最大8発備えられます。遠くの艦艇を攻撃するミサイルです。

 そして―

 田村副長:「こちらは本艦主砲であります、62口径5インチ砲という大砲です。5インチというのが大砲の先端の丸い弾が出ていく直径です。ここの直径に対して大砲の砲身ですね、ここは5インチの62倍の長さがある。7メートルですね、約7メートルの長さがあります」

 これは無人砲で、別の場所で操作をしながら発射させることができます。

 田村副長:「一番分かりやすいのは、本艦と同じように海に浮いている船、こういったものをターゲットにした射撃をすることができます。その他にも、空を飛んでくるミサイルとか、我に対して脅威である航空機などを撃ち落とす事もできます」「(Q.地上のものも撃てる?)対地射撃と言いますけれども、陸上に対して撃つ事も可能です」

 この大砲は、日本の海域で訓練射撃をしているといいます。

 田村副長:「当然、往来する船等の安全もありますので、その際にはきちんと、ここは危険ですという案内をして、そのうえで射撃訓練というのを実施しています」「(Q.結構回る?)一部の限界はありますけれども、かなり後ろの方まで旋回させることができます」

 そして、イージス艦の内部に潜入。

 弾道ミサイル防衛の最前線の心臓部にカメラが初めて入りました。

 田村副長:「こちらがCICと言いまして、コンバットインフォメーションセンター、戦闘情報中枢と呼ばれる区画です」「(Q.かなり頑丈な扉だが?)水が入ったり、火事の火が入ったりしないように、頑丈なハッチで守っています」「(Q.結構広いですね)30~40人ぐらい入りまして、状況によってはそれ以上の人が詰めることもあります」「(Q.モニターたくさんあるがどういう役割?)こちらのディスプレイには色々戦術的な情報ですとか、あとは我々が行動している海域の情報など、色々な情報を映すことができまして、それに基づいて意思決定をして、必要な処置について命令を伝えています」

 CIC内部の明かりは、ディスプレイを見やすくするため、多くを青色の明かりに変えているといいます。

 実際の訓練の一部に立ち会うことができました。

 まず、対弾道ミサイルです。

 あしがら乗員:「早期警戒情報受信しました。配置に就きます。対BM(弾道ミサイル)戦闘用意!」
 
 このアラームが鳴ると、艦内のすべての乗員は必ず決められた配置に就く必要があるとのことです。

 あしがら乗員:「アラームが鳴ったらもうすぐ飛び起きて、艦橋まで走って見張りの配置に就いて、周辺の状況だったり、船も当然走っているので漁船とか影響がないかという報告もしますし」

 あしがら乗員:「目標については領域内に弾着します、対処します」「対BM戦闘、SM3攻撃始め」「SM3発射!」「5、4、3、2、1マークインターセプト。目標ターゲットキル」「目標対処しました、攻撃やめます」「攻撃やめ」「SM3攻撃やめ」

 また、対空戦闘では―

 あしがら乗員:「本艦、捕捉された模様」

 CICの内部です。対空訓練を行うということで、非常に緊迫した空気が漂っています。ディスプレイは映せないということで機密性が高いエリアとなっています。画面には地図が映っていたり、数字がたくさん並んでいたりします。表記はほとんどが英語です。アメリカ軍と連携しているからでしょうか。交信はほとんどが英語です。

 あしがら乗員:「右60℃の敵航空機反転」「目標4機、SM2発射」

 訓練の詳細は分かりませんが、敵の戦闘機からミサイルが発射されたとの想定の可能性があります。

 あしがら乗員:「残り3機…キル、…キル、…キル、目標全機撃墜」

 そして対潜水艦の訓練も―

 あしがら乗員:「対潜戦闘VLA攻撃始め」「VLA発射始め」「VLA発射1分前」「VLA用意」「撃てー」

 訓練の一部だけでしたが、CICの内部は、映像はほとんど映せず、音声も聞くことができない状況が続きました。

 イージス艦あしがら・坂井艦長:「実際本番がある時に向けて毎日訓練を積み重ねて、本番の時も訓練以上のことはできないと思っております。訓練から緊迫感を持ってやっております」

 日本を取り巻く安全保障環境は一層、厳しさを増しています。

 あしがらの艦長である坂井1佐は、常日頃からあらゆる状況を想定して訓練の質を上げる努力を続けていると言います。

 イージス艦あしがら・坂井艦長:「脅威は空からもありますし、水中からもあります。色んな脅威に対処できるようにやっておりますので、練度や所要に応じて訓練をやっているのが実情です」

 インタビューを撮影したのは10月28日。

 このインタビュー中にも、北朝鮮は弾道ミサイルを発射していました。

 イージス艦あしがら・坂井艦長:「北朝鮮のミサイル技術の高度化が進んでいるというふうに受け止めています」

 また、中国も弾道ミサイルを8月上旬に日本の排他的経済水域=EEZ内に落下させたと推定されます。

 イージス艦あしがら・坂井艦長:「中国は今回、事前に示した航行警報海域内に弾着させておりますので、それだけの精度を持って弾着させる能力を保有しているという事を示したわけであります。このような脅威に対して備えることができるように、兆候を察知して速やかに探知識別追尾して、必要に応じて迎撃できる態勢を構築しておくことが重要であると」

 日本の弾道ミサイル防衛の最前線を担うイージス艦。

 その役割や責任はとても大きいといいます。

 イージス艦あしがら・坂井艦長:「我々に突き付けられている課題というのは、非常に大きくハードルの高いものだというふうに感じておりますけれども、それをしっかり乗り越えて、やりがいを持って乗員を統率していきたいというふうに考えています」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp