【残業200時間超】過労の末…自殺した医師 遺族が願う、医師の働き方改革

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今月から医師の働き方改革が始まり、これまで実質青天井だった勤務医の時間外労働が
原則年間960時間に制限されます。
医師の負担軽減が期待される一方で長時間労働に支えられてきた日本の医療サービスに影響が出る可能性も。医療サービスの維持と医師の健康、両立させることはできるのでしょうか?

おととし 一人の若手医師が自ら命を断ちました。高島晨伍さん。26歳。

「やさしいやさしい上級医になるねんって言った時にやさしいを2回繰り返して言ったのが印象的ですごい嬉しいなと思って」

医師だった父と兄の背中をおって神戸大学医学部に進学。2020年から神戸市にある
甲南医療センターで働き始めました。

「この白衣は神戸大学を卒業したときに同期で記念として作成したものなんですけど。棺の中にこれを入れようと思いましたら、兄が入れてやるなよそんなもんと言いましたんで。死んでまで働かしてやるなよって」

異変があったのは医師になって2年がたったころ。入院患者の担当だけでなく外来診療や学会の発表準備に追われるようになりました。

労働基準監督署が作成した労働時間集計表によると、晨伍さんは亡くなる前の1か月間で
207時間の時間外労働をしていました。さらに100日間休むことなく働き続けていたのです。

これは晨伍さんが母の淳子さんに送っていたメールです。
「せなあかんことおおすぎてしにそう。ざつようばかり」
「ほんまに一回休養せな全て壊れるかもしらん」

不安を感じ連日自宅を訪ねていた淳子さん。2022年5月17日家に行くと、亡くなった状態の信吾さんの姿が。

机の上には遺書が残されていました。
「お母さんお父さんのことを考えてこうならないようにしていたけれど限界です。すべてしてくれた両親に本当に感謝しています。」

労基署は去年6月、晨伍さんの自殺が長時間労働が原因だったとして労災を認定しました。

一方で、病院側は過重労働について真っ向から否定しました。
「病院として過重な労働を付加していたという認識は持ってございません」

労基署が認めた時間外労働207時間の多くが‘自己研鑽’だと主張したのです。

自己研鑽とは、医師自らの知識の習得や技能の向上のために行う学習のことです。

「医師はまさに生涯教育というか、一生涯勉強という典型的な仕事、そういう部分で自己研鑽というものがこの職業とコインの表裏のようについている。そういう職業だという理解をしていただければ」

病院側は自己研鑽が労働に含まれず、晨伍さんの実際の時間外労働は30時間30分だと主張しました。

甲南医療センターの労働環境はどうだったのか。
これは晨伍さんが亡くなるおよそ1年前、若手医師らが労働環境の改善を訴えた際の嘆願書です。

病院側とのやり取りが残されていました。

「専攻医の平均残業時間はおよそ100時間を超えていたと考えられています。このままでは患者さんの命にかかわるという風に考えられますので業務緩和をよろしくお願いいたします」

病院幹部は労働環境の改善を検討するとした一方でこんな話を。

「僕らも昔の世代の人間やから先生らとは意識が違うんやけど主治医していると今日あの人どうなったかなって見に行きたくなるじゃない、半分は勉強やん、自分を鍛えるための」

晨伍さんと同じ時期に勤務していた専攻医は、当時の状況について

「労働環境というのは常軌を逸している状態だったと思います。」「平日の勤務時間帯では自分の担当患者さんのことをしっかり見る時間がないのでやっと当番業務がない土日に薬があっているかとか検査出し忘れていないかだったり必要な診療科にコンサルテーションを出したりしていました」

自己研鑽の扱いについては・・・

「時間外労働であるという風に申請するためには上司の承認が必要なんですね。なので上司がこれは時間外労働じゃなくて自己研鑽だって言ってしまったら時間外労働として申請できませんし」「時間外は50時間以上申請しないようにと直接みんなの前で話されますし」

今月1日。甲南医療センターはテレビ大阪の取材に対し「過剰労働がなかったという認識は変わらない。コメントは差し控える」と話しました。


大阪府内の病院で医師として働く晨伍さんの兄は4月から始まった勤務医の時間外労働の規制について、病院側の意識が重要だと指摘します。

「甲南医療センターのように自己研鑽だとか、若手が勝手に働いていたみたいなような扱いをされるような労務管理に後ろ向きな病院なのであれば、実効的な効果は出ずにそれどころか本来的には働いているのに、まるで働いていないかのようにされてしまうような後ろ向きな効果が出てしまうのではないのかなと思って、より問題が根深くなってしまうのではないのかなというのを懸念せざるを得ないです」

晨伍さんの遺族は、ことし2月、責任を認めない病院側に対し、訴えを起こしました。

遺族の願いは晨伍さんが苦しんだ医師の過重労働の改善です。

「当事者の母親としてしか話せない事ってあると思います。自分でできることを自分なりにやっていこうと思っています。」

おととしの厚労省の調査では勤務医の21パーセントが過労死ラインを超える年間960時間以上の時間外労働をしていることが判明しました。

今月から始まった医師の働き方改革。医師の労働環境改善に動き出した一方で医療サービスの低下を危惧する病院も・・・

大阪府などの調査では働き方改革で府内の9つの病院が診療体制の縮小等を避けられないと本音をにじませました。

大阪府医師会長
「土曜日にしても、世の中は土曜日は休みなんだけど、病院は患者さんの利便性を考慮してやってるところも多かったんですけど、その辺りはやはり縮小せざるをえない。」

医療サービス縮小を心配する病院があるなか、大阪市・北区にある医誠会国際総合病院は
2020年ころから労働環境改善の取り組みを始めています。
4時間に及ぶ急性硬膜下血腫の手術中、患者の状態を管理するのが麻酔科医の田中さんです。手術が終わるまで監視しておく必要があるはずですが、途中で部屋の外へ。

「出ても大丈夫なんですか?」
「手順書があってその範囲内だと彼に任して」

任されたのは医師ではなく看護師。「タスクシフト」といって医師が担ってきた業務を
特定行為の研修を受けた看護師が、代わりに行っているのです。これまでは手術室から離れられませんでしたが、この取り組みでシフトの作成など事務作業ができるようになりました。

「手術が終わって疲れたなと言ってここに来てパソコンを開くとすごい量の手術とかすごい量の業務があるとなるとその時点でへとへとになって、へとへとになりながら管理業務をやっていた。それが日中にできるようになったのでだいぶ気持ちの余裕ができて患者に集中できる」

さらにこの病院では労働時間管理の専門部署や手術や入退院のスケジュールを組む部署を作り、医師の負担軽減を進めています。一人当たりの時間外労働は1月5時間前後まで
減っているということです。

一方で、個々の病院の努力だけでは問題は解決しないと話します。

「今回の働き方改革、たぶん当直ができなく、救急医療を受けられなくなるような医療機関が今後出てくるんだと思います。以前は救急もやってたけど、今ややれませんという病院はその代わりに日勤帯であれば重症の患者も受けられますよ。ということなんで、前の病院が受け持っていた救急医療の機能を医誠会が集約して、その代わりお互いに助け合うという意味である程度の落ち着いた患者さんをそちらで診てもらうと、連携したりしながら、この問題を解決していくことになろうかなと思います」

医師の過重労働に支えられてきた日本の医療。医師の健康を守りながら医療サービスを維持する方法が求められています。



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