桂文珍「はてなの茶碗」をお届けします、お楽しみ下さい。落語をBGMの様に気軽にお楽しみ下さい。概要欄ではお囃子のBGMの無い動画の情報もお知らせしています。

2022/04/18 に公開
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もし、お囃子のBGMが気になるようでしたら、BGMのない動画を作って公開しています。

【healing.music.bgm.channel】

https://www.youtube.com/channel/UCdmCELjErFRdq_YUxvTu3nw

文珍さんの落語を総集編として5本揃えていて、単独の噺しも追加中です。

長い総集編~短い単独の噺まで
演目はほぼ同じだけ網羅しています。

総集編は、概要欄に演目別のタイムラインも設けてありますので、自分の気に入ったお噺が見つけやすいと思います。

お囃子のBGMが気になると言う方は、そちらを試してみて頂けますように、宜しくお願いします。



はてなの茶碗(はてなのちゃわん)は、古典落語で上方落語の演目の一つ。東京では「茶金」の名で演じられる。

三代目桂米朝が、子供の頃にラジオから流れていた二代目桂三木助の口演の記憶をもとに戦後復活させた。

【あらすじ】
大坂生まれで、訳あって京で商いをしていた油屋の男、彼が何かうまい儲け話はないものかと茶屋でくつろいでいると、横で茶道具屋の金兵衛、通称「茶金」がお茶を飲んでいる。彼の動向を注視していると、飲んでいた茶碗を手に取りしげしげと眺め回すと「はてな?」と首を傾げて、その茶碗を置いて店を出た。

油屋は茶碗が価値のあるものだと思い、茶屋から茶碗を買い取ろうとする。同じように考えていた店主が一旦断るも半ば脅すような形で2両と引き換えにそれを受け取った。そして、茶金の茶道具屋を訪ね、売り込もうとするが出てきたのは番頭。彼は「全く値打ちがないので、大金どころか一銭にもならん」と無碍に言い放った。その態度に油屋も腹を立て言い合いになっていると、そこに主人の金兵衛が顔を出す。油屋は彼にさっきの茶碗を見せるが「番頭の言う通り、大した値打ちものではござらん。ただ、どこにもひび割れしてないのに水が漏るので『はてな?』と思ったが、それがどうかしたかね?」と返されて油屋は自棄になって笑う。そして泣き言のように自分が「親から勘当されて大阪を出て、京都に出て油屋をしている。そろそろ親元に帰りたいが、せめて一山稼いで孝行したかった」と呟くと、大家の金兵衛は「そこまで儂の値打ちを買ってくれるのなら、儂が3両でそれを買おう。そしてそのお金で孝行してやりなさい」と言い3両を差し出す。男はその心意気に「ありがとうございます、3両は借りたものと思いありがたく頂戴します。このお金はいつか返します」と伝え、立ち去っていった。

しばらくして、金兵衛の元に公家の鷹司家がやってきて、彼がその話をすると、大変面白がって「麿もその茶碗を見たいものである」と興味津々、そしてその茶碗を風流に思い料紙をとり一首詠む

   清水の 音羽の滝の音してや 茶碗もひびに もりの下露

そんな料紙も添えられて金兵衛の元に返った。噂が噂を呼び、遂には時の帝(天皇)の耳まで届き、「朕もその茶碗を是非見たく申す」と勅が下され、金兵衛は畏まって持参する。帝も不思議と水が漏る茶碗を面白がって箱の蓋に万葉仮名で「波天奈」と揮毫したことで、安物の茶碗が、公家の料紙に帝の揮毫付きという、とてつもない値打ち物となってしまった。その噂を聞きつけた時の大富豪、鴻池善右衛門が「千両でその茶碗を買いたい」とまで言い出し、売れないと断っても担保にして質流れさせてくれとまで計略し、そんなこんなで安物の清水の茶碗が千両で売れてしまった。

早速、金兵衛は油屋にこのことを伝えたいと思うが、不思議なことに油屋は全然店の前を通らない。痺れを切らした彼は丁稚を遣わして油屋を探させた。油屋は結局、借りたつもりの3両をまだ返せなかったのでわざと避けていたのだが、金兵衛は笑って「あの茶碗はこの通り千両で売れた。お前さんに半分の500両やろう」と告げると男は涙を溜めて「そんなこともあるんやなあ…。それならこの前の3両差し引いて497両もらいます」。そして、勢い余って奉公人や女中にお金を分け与え、道行く人にもお金をばらまきながら喜んで去っていった。

金兵衛もこれであの男も大阪に戻り親孝行できるだろうと胸を撫で下ろしていたのだが、後日お祭り騒ぎで舞い上がる油屋がやってくる。全然商いをしている気配もなく、しかも変な器を提げている。金兵衛が怪訝そうに「あんたは何をしているのか?」と訊ねると、「茶金さん、今度は10万8000両の金儲けや」としたり顔。どういうことかと訊ねると…
「今度は水が漏る壺見つけてきたんや」

【概略】
戦後途絶えていたのを資料を基に再構成したもので、基本の筋はそのままだが、ほぼ米朝による創作とされている。一山あてようとする油屋のエネルギッシュさ、それを受け流す茶金の鷹揚さとが見事な対比を成していて、店先での両者のやり取りがこの噺の眼目でもある。とくに、鴻池、関白家、宮中、とのつながりのある茶金の存在感は大きく、「『店が騒がしい』の一言が日本第一の文化人、茶金になっている」と評されているように、品格が求められ、演じ方が難しい。また、関白や時の帝が出てくる唯一の噺で、その点でもスケールが大きい。

鴻池、関白、帝の台詞は地の文とそんなに違わないように演じる口伝がある。また、サゲの直前でも地の文と台詞の移行が難しい箇所があり、いずれも演者の手腕が求められる。

自ら高座によく上がる松尾貴史がこの噺を演じたとき、米朝の口演のCDを繰り返して聞いて練習したおかげで、この箇所を上手く演じ、称賛を受けたことがある。

【余談】
この噺は元々、『東海道中膝栗毛』で有名な十返舎一九作の滑稽本の一編を原典としたパロディであり、それが上方落語となり、桂米朝がわかりやすいように組み立て、アレンジしていったものであるという。そのため、帝(天皇)が登場人物として現れるなど、近代以前なら畏れ多くてありえないことが話の中で起きている。

なお、水が漏る茶碗は実在する。有名な萩焼の茶碗は「水が漏る」苦情が来ることで有名であり、その理由は陶土の肌理が粗いからであり、使い込むとそこに茶が滲入していき、風合いを変化させる。なお、この水の漏る茶碗が萩焼かどうかは定かではないが、昔から一楽ニ萩三唐津などと謳っていたことから、実は清水焼ではなく萩焼であっても不思議ではない。

なお、サゲが「10万8000両の金儲け」なのは諸説あるよう。まず、茶碗が1合なのに対し、水瓶が1斗なので、その100倍、つまり10万両なのだが、あとの8000両はどこから来たのか。最有力なのは、人間の煩悩が百八つあるといわれていることからそれを掛けている説が強いとされる。

#落語 #BGM #rakugo