「ウクライナが武器の違法取引の中心地になる恐れも」戦況を変える“武器供与” ドローンから情報まで・・・危うさを内包する実情を追う【報道特集】|TBS NEWS DIG

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反転攻勢を強めているウクライナ軍。要因の一つが、西側などからの武器供与です。ドローンなどが戦場でフル活用されていますが、危うさを指摘する声も出ています。

■ウクライナ軍を支える“武器供与” 駆使されるドローン

ここにきて、反転攻勢が報じられているウクライナ軍。大きな要因とされているのが、西側からの“武器供与”だ。

ロシアの軍事拠点を攻撃しているのは、トルコ製の軍事ドローン「バイラクタル」。アメリカからは、対戦車ミサイル「ジャベリン」など数々の武器が供与されている。アメリカの軍事支援は、総額5000億円相当にのぼる。

東部の街・ハルキウの住民は、武器供与による戦況の変化を肌で感じていた。

ハルキウ在住 ニコライさん
「以前は、街は2時間ごとに砲撃されていました。ところが、“様々な国から武器が届いた”というニュースが入った頃に、状況は変わりました。砲撃などが少なくなっていったのです。6時間ごと、8時間ごと、そして10時間ごととなり、どんどん聞こえなくなっていきました」

ハルキウ周辺では現在、ウクライナ軍がロシア軍を国境近くまで押し戻している。占領された街を奪還する様子が撮影されていた。

駆使されたのがドローンだ。基地で兵士が操作し、街を上空から偵察。軍事作戦のシンボル「Z」が書かれた車を確認する。そして、ドローンが特定した標的を攻撃する。

今回の戦争では、各地の戦場でドローンが使われている。複数のドローンを制御している作戦本部内部の室内には、多くのモニターがあり、上空から撮影された戦場の映像が送られてくる。実際にドローンを使っているという、領土防衛隊の男性らに話を聞くことができた。

ウクライナ領土防衛隊 
「ドローンには2つのカメラがあります。赤外線カメラと、もう一つは8倍にズームできるカメラです。そのため、遠い所から敵を確認することができます」

使用しているドローンはアメリカ製。仲間で資金を出し合い、購入したという。

ウクライナ領土防衛隊 
「これは市販されているドローンなので、ロシア軍に簡単に感知され、撃墜されます。なので、どんどん次のドローンを買う必要があります。私たちはなるべくドローンを入手するようにしていますが、キーウではドローンが品切れで買えません。だから私たちはヨーロッパからドローンを仕入れていますが、諸外国から支援としてウクライナに届けられているものもあります」

日本政府も4月、「ドローンを提供する」と発表。情報収集用だとしているが、どう使うかはウクライナ側に委ねられる。

自身もウクライナ軍に所属していたという軍事評論家は・・・

ウクライナの軍事評論家 タラス・チュムトさん
「供与された武器のおかげで、東部でロシアの侵攻を食い止め、ソ連時代の古い武器を使っているロシア軍に対して、量的にも質的にも優位に立てるようになりました」

ーー日本政府は小型ドローンを提供していますけども、標的を見定めるために使っているのか、攻撃の後の確認に使うのか、うかがえますか?

ウクライナの軍事評論家 タラス・チュムトさん
「日本からのドローンは見ていませんが、小型ドローンの用途は多岐にわたります。使い方を覚えるのが簡単だし、数も多くて大活躍です」

■「合法的な使用なら問題ない」戦争に提供される民間企業の情報

民間企業が持つ“情報”も利用されている。

軍事侵攻の初日に撮影されたウクライナ国境にほど近い、ベラルーシの衛星画像。ロシア軍が川に仮の橋を架けている。たもとには、工作部隊とみられる車両もある。

撮影したのは、アメリカにある民間の衛星会社で、ウクライナ側に画像データを提供している。

衛星会社『カペラスペース』 パヤン・バナザデCEO
「素晴らしいことですし、うれしく思います。私たちのデータが命を救うために使われて、ウクライナ侵攻で、画像提供による支援ができてよかったです」

この会社は、SAR(=サー)と呼ばれる 特別な衛星を持っていて、Google Earthなどの光学衛星と違い、夜でも、雲に遮られていても、地上を映し出すことができる。

5月2日、ドネツク州で壊された橋。ウクライナ軍が、ロシア軍の補給ルートを断つために破壊したとみられる。

民間企業が、戦闘行為にも利用できるデータを提供していることについて聞くと・・・

衛星会社『カペラスペース』 パヤン・バナザデCEO
「合法的に使用されているならば、問題はありません。ウクライナで起きていることであろうが、別の場所であろうが、軍用車の隊列の画像であっても、私たちが提供しているものは“商品”なのです」

■「武器商人たちが戦争を激化させる」武器供与に鳴らされる警鐘

しかし、こうした武器や情報の提供に、危うさを指摘する声も・・・

5月9日、アメリカで「武器貸与法(レンドリース法)」が成立した。ウクライナへの軍事物資の貸与の手続きを簡略化し、迅速に提供することを可能にする。

アメリカと共に武器供与に積極的なのが、イギリスだ。ジョンソン首相は5月3日、外国の首脳として初めてウクライナ議会で演説し、さらなる軍事支援を表明した。

イギリス ジョンソン首相
「本日、イギリス政府として発表します。私たちは他の友好国と同様に、長期的な目標、つまりウクライナを攻撃できないほど強い国にするまで、兵器などを提供していきます」

イギリス国民の反応は様々だ。

「武器供与を支持しています、100%支持します。今、起きていることは間違っていると思うからです」
「武器供与には反対です。解決策にはなりません。戦争を激化させる無責任な行為です」
「武器供与は理想的ではありませんが、他にどんな選択肢があるのでしょう。ロシア軍を止めないと。最低限できるのは、彼らの侵攻を遅らせて、代償を払わせることです」

4月の世論調査では、ウクライナ軍への武器供与について、支持74%:反対13%と、イギリス国民の7割以上が支持する一方、1割は反対している。

反対する団体の幹部に聞いた。

『核軍縮キャンペーン』 トム・アンタレイナー議長
「どこかの誰かが、この武器支援で利益を得ています。兵器製造企業と貿易会社は、善意のためではなく、金儲けで殺戮兵器を売っているのです」

イギリス政府は武器供与よりも、停戦に向けた外交的アプローチを重視すべきだという。

『核軍縮キャンペーン』 トム・アンタレイナー議長
「この戦争がこれからも続き、武器商人たちがさらに戦争を激化させることで、ウクライナでは、今後も何千人もの死傷者が出る恐れがあります。そして、ウクライナが新たな武器の違法取引のハブ=中心地となる恐れもあるのです」

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