第二部各論 第1章4節 統合失調症を解説します #早稲田メンタルクリニック #精神科医 #益田裕介

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00:00 OP/統合失調症とは
02:47 神経発達の異常
04:27 経過
07:15 鑑別
09:42 治療
11:10 心理社会的治療

本日は「統合失調症」について解説します。

■統合失調症とは

統合失調症とは、人口の1%くらいが発症する病気といわれている、主にドパミン系の異常による病気です。

「ドパミン」とは脳内物質ですが、その脳内物質をよく使う脳の神経回路の異常です。
神経回路系の異常によって起きる病気だといわれてます。
その結果、幻覚や妄想が生まれてくる病気です。
精神科の病気では一番メジャーな病気です。一番精神科の病気らしい病気なんですね。

幻覚・妄想というのが特徴的で、よく映画やニュースに出てくるのは妄想の方です。
私は神だとか、私はキリストの生まれ変わりだとか言って、叫ぶ、思いこむ。
そして自分でもわけがわからなくなってしまうのが統合失調症の症状です。
よく映画などで取り上げられる病気のイメージです。

ただ、実際の妄想は「私は神だ」など明らかにおかしな妄想は見ることが少なくて、どちらかというと被害妄想が多いです。
誰かに見られているんじゃないかなど。

これがどんどん進んでいくと、「駅で悪口を言われたような気がする」「後ろの方で自分のことをくすくす笑っている人がいる」「ストーカーに遭っている」「ネットでハッキングされている」「ネットで悪口を言われている」「ヤクザに追いかけられている」、そういう妄想を抱くことが多いかなと思います。

幻覚というのも「幻聴」が多いです。聞こえるやつですね。
悪口を言われているんじゃないか、笑われているような感じがする。
病気が進んでいくと、「隣の部屋から殺すと言われる」「殺すという声が聞こえる」とかそういう言い方をしたりします。

それで苦しくなって怖くなり暴れてしまったり、殺される前に自分で自分を傷つけてしまおうと思ったり、そういうことを犯してしまうということです。

■神経発達の異常

病気はドパミン系の問題なのかというと、最初はドパミン系の問題だと考えられていたのが、研究が進んでいくにつれて、NMDA受容体やGABA受容体の異常も見つかってきて、今ではドパミン系の異常というよりは、神経発達の何かしらの異常なのではないかと考えられています。

例えば母子感染ですね。
お腹に子どもがいるときに母親が感染症にかかったりすると、その子どもの統合失調症の発生率が高いと言われたりしています。

神経発達の異常なのですが、子どもの時に起きるというよりは、10~20代の時に起きます。
思春期の終わりぐらいに脳みそがだんだん大きくなってきて、脳が使わない脳回路を減らしていく作業に入ります。
そういうものをプルーニングというのですが、このプルーニングの異常なのかと考えられたりしています。
まだまだすべて仮説段階の話で、全然わかっていません。

統合失調症というのはまだまだわかっていない病気ということです。
ただ、症状は特徴的なので、診断されやすいですし治療法も少しずつわかってきています。
精神科の病気の中では診断がしやすい病気です。

■経過

・前駆期
どういう経過をたどるのかというと、まず「前駆期」というものがあります。
何か変だな、脳の違和感を感じる、何かいつもと違うような感じがする、みたいなことを感じるようです。

何かちょっとよくわからない不安感を感じたりするのですが、この時点ではまだしっかり診断がつかないことが多いです。

患者さんが何か不安だなとかよくわからないなと思って来ることもあるのですが、この時点では思春期特有の悩みなのか、それとも統合失調症の発症なのかはよくわからないことが多いです。

・急性期
それが進むと「急性期」になります。
急性期では主に幻覚、妄想、混乱、そういう「陽性症状」が目立ちます。
ここに来てようやく診断がついたり、病院を受診することが多いです。
そこで薬物治療をしていくと症状が落ち着きます。

・消耗期
目立つ症状が落ち着いて、今度は「陰性症状」というのが目立つようになります。
陰性症状というのは自閉です。人と交流を取りたくない感じ、隅に固まって誰ともコミュニケーションを取りたくない、暗い場所でぽつんとぼーっとしてるような感じ。
抑うつ気分や不安が目立つようになります。

・維持期
消耗期を過ぎると「維持期」になり症状が落ち着きます。
ただ、最近では認知機能の低下が統合失調症の症状としては注目されています。
言葉を扱いにくかったり、記憶力が落ちていたり、そういうところも維持期では目立ったりするかなという感じです。


前駆期の段階で薬物治療をしていけば、急性期とか消耗期は軽く済むんじゃないかという発想もあるのですが、ここら辺はまだよくわかっていません。

統合失調症の治療に使われる抗精神病薬にも副作用があったりするので、なかなかどうなのかということもあります。
使っていいのか、使ってはいけないのかというのもあったりします。
ただ、最近の抗精神病薬は副作用が少ないので、少量はこの前駆期の不安感に対して使っていくのも臨床的にはよくあるかなという気はします。

■鑑別

鑑別診断としては「遅発パラフレニー」や「DLB レビー小体型認知症」を挙げるかなと思います。

・遅発パラフレニー
統合失調症の幻覚妄想は10代、20代で起きることが多いのですが、40代、50代で幻覚妄想が出るパターンもあります。
それを遅発パラフレニーと言います。
こちらは明らかな妄想というよりは、ちょっとわかりにくい妄想を言うことが多いです。
ごみ捨て場で悪口を言われているとか、ご近所さんたちから嫌がらせを受けてる気がするとかそういう言い方をします。

幻覚・妄想もはっきりしないこともあって、日常の会話と妙にミックスされていて、どこからが本人の不安感や疑心暗鬼の気持ちなのかどこからが妄想なのか、よくわからなかったりします。
認知機能低下が目立ったりするかなという感じです。

薬物治療をするとわりと良くなりますが、なかなか若い人の統合失調症の症状のようには、薬物治療で妄想や幻覚を抑えることは難しかったりします。
結構いるんですよね。

遅発パラフレニーの人の場合は病気にかかるほどじゃないけれど、何か奇妙な訴えを言っているおじさま・おばさまみたいな形でいます。日常の中にも結構いますね。

・DLB レビー小体型認知症
DLBというのは「レビー小体型認知症」というもので、主に特徴的なのは幻視です。
子どもたちが遊んでいるとか、昨日の夜子どもが遊びに来たんだよ、というようなことを言ったりすることが多いかなと思います。

幻視がメインで、あとはパーキンソン症状が出たりします。
パーキンソン症状というのは仮面様顔貌、歯車様固縮といって体の動かしにくさなどがあります。

あとはうつ症状が最初に出たりします。
病気が進んでいくと認知機能の低下がわかりやすく出てきたりします。
初期の段階だと、遅発パラフレニーなのか老年期のうつなのかわかりにくかったりします。

■治療

統合失調症の治療はどうするかというと、基本的には脳病なので薬物治療がメインです。
カウンセリングで治すというよりは、薬で治すというイメージが正しいです。

「抗精神病薬」というドパミンをブロックする薬を使います。
ドパミンをブロックするので、副作用としてはドパミンをブロックされたことによる副作用、つまりパーキンソン症状が出ます。

パーキンソン病というのはドパミンが出なくなる病気なんですね。
薬で抑えてしまうのでパーキンソン病のような症状が出てしまう。
仮面様顔貌、歯車様固縮で動かしにくい、小刻み歩行などがあったりします。

ドパミンをブロックするので、足がムズムズする感じの訴えもあります。
それはアカシジアと言います。結構これは気持ち悪くて嫌なんですよ。
アカシジアが出た場合は、すぐ副作用止めを使ったりとか薬を変えたりします。

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統合失調症を疑う症状 幻覚妄想の初期、軽症例 #早稲田メンタルクリニック
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   早稲田メンタルクリニック院長 益田裕介

【自己紹介】
益田裕介
防衛医大卒。陸上自衛隊、防衛医大病院、薫風会山田病院などを経て、2018年都内で開業。専門は仕事のうつ、大人の発達障害。といいつつ、「なんでも診る」ちょっと変人よりの町医者です。
趣味は少年ジャンプとお笑い。キャンプやスキーに行きたいです。
2020年6月5日より断酒継続中。

【参考】
厚労省みんなのメンタルヘルス https://www.mhlw.go.jp/kokoro/
カプラン 臨床精神医学テキスト第3 https://www.medsi.co.jp/products/detail/3509
倫理規定について https://note.com/mentalyoutubers/n/nb130991f3fa4

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