統合失調症は治りますか?【精神科医が約8分でご質問にお答えします】

「統合失調症」は治るのでしょうか?統合失調症は、どうしても治療薬「抗精神病薬」をやめると再発してしまうため、薬を使った状態での安定(寛解)を目標にする必要があります。その中で、治療後に残る症状には個人差が大きく、その状況などにより生活面の目標などは変わってきます
精神科医が約8分でご質問にお答えしています。
出演:春日雄一郎(精神科医、医療法人社団Heart Station理事長)
こころ診療所吉祥寺駅前 https://kokoro-kichijoji.com
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↓↓内容の詳細は下記になります。

(1)ご質問「統合失調症は治りますか?」
ご質問にお答えします。今回は「統合失調症は治りますか?」についてやっていきたいと思いますよろしいくお願いします。今回お受けしました質問は「統合失調症は治りますか?」というご質問になります。まず、シンプルにお答えを伝えますと、「薬の継続が必要。残る症状は個人差が大きい」ということになります。

(2)統合失調症についてのまとめ
まず、統合失調症についてまずまとめていきたいと思います。これは悪化すると、幻覚や妄想など、いわゆる陽性症状が目立つ脳の不調になります。原因としては、脳のドーパミンの過剰・出過ぎることなどが要因とされますが、いろいろな要素があるとされます。治療としては、抗精神病薬と言われるこころの薬を続けていきまして、症状の改善と、ぶり返し(再燃)の予防を図っていきます。

(3)治る3つの用語(寛解・治癒・完治)
ここで治るということの定義を今一度振り返っていきますと、寛解・治癒・完治という言葉がありますけれども、まず1つ目寛解は薬を使った状態で症状が目立たなくなった状態。治癒とは薬がなくても症状がない状態が続いているという状態。数カ月以上続いている状態。そして完治とは治癒していてかつ再発するリスクも少ないということになります。

(4)統合失調症では「寛解」が目標
では、統合失調症ではどうかと見ていきますと、まず寛解に関してはとする場合もある。ただ、部分寛解と言って症状が残ることもある。○から△ということで書いています。一方、治癒に関しては薬がない状態ですと、再燃のリスクは極めて高いということがありますので、これは難しい。その結果、完治も難しいということがあります。寛解が目標になるということがあります。

(5)統合失調症の症状を振り返ると
ここで統合失調症の症状をおおまかに振り返っていきますけれども、大きく2つに分けると、陽性症状と陰性症状群ということになります。
順番に見ていきますと、まず陽性症状ですけど、これは脳が敏感になることによって出る症状、敏感さの症状と言い換えられるかと思います。具体的には、幻聴や妄想などが有名です。そして、これは治療によって・薬の治療によって改善しやすいという特徴があります。
一方で、陰性症状群、陰性症状及び認知機能障害などとも言いますけれども、これはいわゆる後遺症的な、脳がダメージを受けているという症状になります。具体的には陰性症状、意欲が出なかったり、活動しにくくなったりする。後は認知機能障害、考えたり、何かをやるという力がダメージを受けるということになります。これらに関しては、症状が残ることが多いということが特徴になってきます。

(6)統合失調症は治療後に、症状の残りの差が大きい
そして、治療・薬の治療などをしていくと、基本的には改善していくんですけれども、どういう症状が残るかどうかということに関しては、個人差が大きいということがあります。
大きく3パターンに分けると、人によっては両方残る。幻聴なども残って、陰性症状群も残るという方がいらっしゃいます。この場合は、幻聴などにうまく対処しながら、その人なりの生活を目指していくということになってきます。
次には陰性症状だけが残るという方。これは広く取ると寛解ということになります。ただ、生活に関してはやりづらさがあるので、そこのリハビリが大事になってくるということになります。
そして、もう一つが両方とも目立たない。これはいわゆる寛解の状態になります。この状態の場合は、仕事復帰なども現実的に目指していくことになるんですけど、ただし再燃のリスクは薬を使っていてもありますので、そこには注意が必要ということになります。

(7)統合失調症:治療後の残る症状の強さと、目標の違いについて
そして、残る症状の強さによって、実際生活の状況、あと目標ということが変わってきます。大きく分けると症状が強く残る時、一部残る時、あまり残らない時ということに分けられるかと思います。
まず、1つ目は強く残る時ということで見ていきますけれども、ここにおいては目標は安定して生活を続けるということが目標になってきます。原則としては病院に通院をすると、ちょっと調子を崩してしまった時は入院をすることがあり得ます。ただ、なるべくその予防を図っていくということになってきます。そして生活に関しては、必要があれば訪問、看護訪問してくる看護師さんのサポートを受ける。もしくはヘルパーさんのサポートを受けるということも選択肢になってくると思います。必要なサポートは受けながら安定した生活を目指していきます。そして生活リズムは大事ですので、日中活動できる場として、いわゆる病院にあるデイケアを活動して、日中の活動および生活リズムを保っていくということも一つ大事なことだと思われます。
続きまして、一部症状が残る時ということになりますけれども、この時の目標は再燃を防ぐ中で、できることを増やしていくということになってきます。この場合も再燃リスクはあるので、原則は病院に通院をして悪化した時には体制があるということを整えていきます。その中で活動を増やしていくということになります。先ほどありました。デイケアというものがあります。それに定着してきたら、ステップアップとして作業所(就労継続B型)と言いますけれども、作業所などを行きまして、就労継続B型ですけれども、(あと)グループホームなど生活のリハビリをしていくというのも、一つの方法になってくるかと思います。で、残る症状に対しては良く対処していきながら、どうしても負担がふえると再燃のリスクは出てきますが、再燃の前ぶれに注意をして前触れだったら早めに対応するということをしていただけたらと思います。
続きまして、残る症状が少ない時ということですけれども、この場合の目標は、「再燃に注意しつつ社会復帰を検討していく」ということになるかと思います。この場合も通院と服薬は続けて、何か悪くなった時は、早めに対処して悪化を防いでいく、再燃を防いでいくということになります。で、安全策としては、社会復帰の安全策としては、就労移行支援リハビリをしながら仕事を探すというものがあります。それを続けていきながら、障害者枠での仕事を探していく。そういう段階的な復帰というのが安全策になります。人によっては、いわゆる一般枠・一般での仕事を探すこともあると思います。その場合は、再燃のリスクが非常にありますので、そこの管理に細心の注意を払う必要があるかと思います。

(8)統合失調症:予後の改善のための取組みのポイント
そして、これらの予後をなるべく良くするための取り組みとして見ていきますと3つほどポイントがありますが、まずは早目に治療を始めるということ、治療をしない期間、未治療期間が短いほど予後がいいとされますので、なるべく早めに気づいて早めに治療を始めるということが大事かと思います。
2つ目としては再燃を防ぐ。特に薬を中断しての再燃というのはその後ダメージが大きいので、それは必ず防いでいくということが大事かと思います。
3つ目としては生活の安定、日中の活動・生活リズムを安定させるということが予後の改善にも有効とされます。

(9)まとめ
今回は「統合失調症は治りますか?」ということで見てまいりました。統合失調症は脳の不調でありまして、安定後も抗精神病薬という薬を続けることが必要なので、目標はあくまで寛解ということになってきます。ただ、その中で治療した後、残る症状は個人差が大きいということになります。そして、残る症状の強さに合わせて、再燃を確実に防いでいく中で、どうやったらよりよく生きられるか、その方法をそれぞれ探していくということになってきます。

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