【動画】イージス艦「あしがら」乗員の過酷任務 弾道ミサイル防衛の最前線(2022年11月23日)

2022/11/23 に公開
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相次ぐ北朝鮮のミサイル発射。日本の弾道ミサイル防衛の最前線にいるのは、海上自衛隊のイージス艦です。今回そのイージス艦の過酷な任務を負っている、乗員にカメラが密着しました。

 倉富柾樹海士長(23)。イージス艦「あしがら」に乗って、延べ4年になります。

 倉富海士長:「見張りが一番、艦としては大事だと思うのでそれを責任感をもって行っております」

 倉富さんは、あしがらの運航の安全に携わる任務を担っています。

 手旗信号や、発光信号などを使い、護衛艦同士の連絡・通信を行う任務も兼ねているといいます。

 あしがらは、佐世保基地を母港としていて、乗員はおよそ250人。国際観艦式に出席するため、横須賀基地に向かう準備を進めます。

 その後も多国間で訓練などを行うため、油やコメなど、大量の食料を積み込みます。

 長い時で半年間、船に乗っていることもあるといいます。

 乗員:「業者さんにあしがら何キロごみを出していますって」

 ごみもそれぞれが持ち込み、業者が捨てます。

 シーツも1カ月程度で交換するため、クリーニングされた新しいものを積み込みます。

 出港時が最も忙しい時でもある倉富さん。忙しなく艦橋やウイングを動き回ります。

 そしてもう一人。

 乗員:「体調不良者?なし!」

 村田3曹:「エンジンを起動して、それの整備記録とかですね」

 村田朋香3曹(23)。

 村田3曹:「主にエンジンを整備したり、その他発電機とか冷房機とかの整備をしています」

 村田さんも出港時には機械室を走り回ります。午前6時ごろから機械を起動させていました。

 村田3曹:「出港がやっぱり大変なんですけど、出港したらしっかり自分の仕事を全うできるように頑張っています。結構油で汚れたりとか、ニオイもくさかったり、エンジン回したら熱かったりするんですけれど、陰ながら乗員を支えているというところでやりがいを感じる」

 この3日間の航海に、取材班が同行。九州の南の大隅海峡を抜け、四国沖に。そこから横須賀基地へ向け北上していくルートです。

 村田3曹:「イージス艦特有のミサイル対処が、やっぱり他の護衛艦と違うなというのを感じます」

 イージス艦の主な任務は弾道ミサイルからの防衛。北朝鮮などからのミサイル発射に常時、備えるといいます。

 村田3曹:「寝ててもすぐ飛び起きて着替えて走っていきます」

 あしがらに乗って1年。村田さんも徐々にイージス艦にも慣れてきたといいます。

 村田3曹:「お風呂に入っていたり、ご飯を食べたり、何をしていても、ミサイルが撃たれた瞬間に急いで自分の配置についてそれに対応するっていうのが大変だなと感じました」

 海上自衛隊に入って、1年のうちに、夏の季節を感じなかったこともあったといいます。

 村田3曹:「一度オーストラリアに行ったことがあって、あちらは南半球で季節が違うので、冬を2回経験したりとかあります」

 過酷な任務のなか、村田さんのリラックスタイムは、女性乗員同士でのおしゃべりや、家族との会話といいます。

 村田3曹:「(Q.グループは仲良し?)そうですね。もちろん。艦橋で見張りをしてくれる子もいたり、ご飯をつくってくれる給養員や大砲とか整備している子もいて、いろんな子が集まっています。だいぶ女性も増えてきて、わりと船の中の居住性もよくなったりというのは感じました」

 倉富海士長:「こちらがいつも寝ているベッド。もう慣れました。来たときはロッカーに全部荷物入るかなっていう不安もあったんですけど、慣れてくると荷物も少なくなって」

 乗員は2段ベッドで寝ています。倉富さんは上官の指示で上のベッドに。

 倉富海士長:「天井にたまにぶつけたりします。気を付けないといけないんです」

 倉富さんのモチベーションは、家族だといいます。

 海上自衛隊で知り合った妻と来年3月に生まれる予定の赤ちゃんのエコー写真をロッカーに貼っています。

 倉富海士長:「私から声をかけて仲良くなってみたいな流れで。妻も電子整備という職種で、機器が不具合起きた時に対処したり、艦の機器のスペシャリスト」

 あしがらに乗っている間は連絡が取れにくくなります。

 そんなときは家族などの登録した相手とメールができるサービスを使って一日3回程度、連絡が取れるといいます。

 倉富海士長:「届いていました。ちょっと恥ずかしい内容です。台風が接近しているときとか、いろいろ教えてくれるんで。会えないのはもちろん寂しいので、しっかり言える範囲で今の状況だったり自分の健康状況だったり、知らせてあげたいなというのもありますし」

 家族と連絡が取れないときは、筋トレをして息抜き。あしがらの中にあるジムでは、実際の重りを置かず、空気に圧力をかけて重さを調整できるように、工夫がされています。

 記者も挑戦しますが、空気圧の重さに愕然(がくぜん)。

 筋トレの後はお風呂。艦内には3カ所、お風呂があり、交代で毎日掃除した後、入ります。つかの間の休息です。

 この日の夕食は、赤魚の甘酢揚げとクリームシチューなど。栄養士が考えたメニューに加え、艦内で余っている食材などを使って、献立をアレンジしているといいます。

 夜、艦内は日没の時間になると、赤色灯に変わります。夜間に目を慣れやすくするためです。この日は午後6時すぎに日が沈みました。

 倉富さんの任務はこの日、午後9時から。艦橋での見張りの勤務につきます。

 倉富海士長:「左視界内、異常なし」

 寒空のなか、双眼鏡をのぞき、警戒に務めます。24時間、交代で任務は続きます。

 明け方、3日間かけて、東京湾の沖に着きました。漁船も多く、船の往来が激しくなります。

 この日は金曜日。隊員が待ち望んだカレーの日。

 イージス艦では、料理も蒸気を使います。高熱の蒸気だと、コメは15分程度で炊きあがり、およそ10分間、蒸らすとできあがり。

 あしがら給養員:「下味をつけてから、やっぱり1時間、2時間ぐらい煮て柔らかくしてから…」

 また牛肉はカレー粉で炒め、水、コンソメ、砂糖、しょうゆで味付けをします。

 あしがら給養員:「体に染み込むぐらいカレーのニオイがするんですよね…」

 イージス艦「あしがら」のカレーでは、お酢と赤ワインを隠し味に入れます。酸味やアルコールを飛ばし、味が締まるといいます。

 赤ワインはまろみを出し、お酢にはアミノ酸が含まれているので、うまみ成分が引き出て、長い間、煮込んだようなカレーになります。

 あしがら給養員:「今からヨーグルトいれます。いっぱい隠し味あるんで」

 きょうのカレーは甘口と辛口の2種類。辛口には、キャロライナリーパーと呼ばれる辛い唐辛子をたっぷり入れます。

 カレーの日には、行列が長く続くといいます。ご飯やカレーを大盛にするため、列がなかなか動かないからです。

 あしがら乗員:「いつもおいしいのを出してもらっているので、いっぱい食べちゃいます」「おいしいんでたくさん食べちゃいます。やっぱり愛情がこもっていますね」

 横須賀基地に入港。日本周辺の安全保障環境が厳しさを増しています。イージス艦の乗員一人ひとりが果たす役割は大きくなってきています。

 村田3曹:「国を守るものとして、自分の職種の技能を向上させることはもちろんなんですけど、女性隊員の活動・活躍が期待されているので、もっと女性が働きやすいような環境とかに貢献できるような人になれたらいいなと」

 倉富海士長:「来年生まれる子どもから自慢できるパパになれるように。国防の最前線という責任感も持っていますし、その任務が終わって無事に入港できたっていう時には、家族に会えてやっぱり頑張ってよかったって。そういうところはやりがいを感じています」
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