雪国の“人情女将”小さな町の食堂に…外国人が続々!きっかけは6年前の“3万ウォン”【Jの追跡】(2023年2月4日)

2023/02/04 に公開
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切り盛りする女将さん自身も、「なんで、外国人が来てくれるんでしょう?」と首をかしげる珍現象。旅行ガイドブックにも載っていない、北海道の小さな町の小さな大衆食堂に、世界中から観光客が続々と訪れます。

その裏には、おなかと心を満たすために、なんと365日一日も休まず店に立つ、人情女将の“オモテナシ”がありました。

■創業65年の食堂「おなかいっぱいの料理で幸せに」

北海道のほぼ中心に位置する、上富良野町。夏には「ラベンダーの町」として知られますが、冬は雪に覆われ、一面、銀世界になります。

地元住民:「高齢化で、雪かきができない家庭が増えてきている」

住民の3割以上が、65歳以上の高齢者です。そんな町で、65年前に創業した「第一食堂」。3代目女将・西永理佳さん(41)が切り盛りしています。

常連客:「おいしいですよ。いつも、山盛りだもんね」

西永さん:「おなかいっぱいで、帰ってもらいたい。それが第一食堂のやり方です!」

「おなかいっぱいの料理で幸せに」が、理佳さんの流儀。名物、甘辛ダレを絡めた「豚玉丼」など、メニューはどれもボリュームが自慢です。

西永さん:「生きていくためには食べないと…ウチの食堂のモットー。給料とか、皆上がっていないのに、食べることくらいは我慢しないで食べてほしい」

もちろん、経営は楽なわけではありません。

西永さん:「(Q.菜箸の長さが違う…)大丈夫!使えれば一緒!」「これがぴったり合う!フライパン オン フライパンさ」

■食堂に足運べない高齢者のため…“お届け”も

「生きることは食べること」が信念の理佳さんは、なんと365日、一日も休むことなく店に立つ働き者なのです。

理佳さんの一日は、夜明け前の午前4時から始まります。準備は、昼から始まる食堂の仕込みだけではありません。

西永さん:「一人暮らしの高齢者のお食事も、朝・昼・晩という人もいる」

実は理佳さん、食堂に足を運べない高齢者のために“お届け”もしているのです。

朝からカツ丼を希望する人もいれば、食事制限で食べられるモノが限られている人もいます。体調や好み、栄養バランスを考え、一人ひとり中身の違う食事を用意しています。

西永さん:「おっはよ~う」
木村さん:「おはようございます」
西永さん:「木村さんの好きなカツ丼持ってきたで」
木村さん:「あ~そうなの」

80代の木村さんは、理佳さんのカツ丼が大好物。足が悪く、買い物に苦労しているといいます。

木村さん:「足も弱ったから、行き帰りタクシーで」
西永さん:「(家からスーパーまで)片道620円、帰ってきたら1240円。何個買える?もやし…」

配達料は、無料。雪国で外出が困難な高齢者の暮らしを支えたいとの思いからです。

西永さん:「伊藤さーん!だいいち~(第一食堂)!新聞も取ってないよ…」

配達を自ら行うのは、高齢者の変化を見逃さないためだといいます。

西永さん:「どうだい?体調はどうですか?」
伊藤さん:「おなか痛くて、今寝とった。もう、お迎え来てもいいな」
西永さん:「ダメだよ!何、言ってるんだよ~」

低血糖で外出ができない82歳の伊藤さんには、朝昼晩と、毎日3食をお届け。薬の飲み忘れがないかなどにも、気を配ります。

西永さん:「毎日行っている人は見られるから、変化に気付ける。朝おしゃべりして、健康チェックOKって言ってね。必然的に休まない、365日になってしまうんだな。お客さんがいる限り、休まない」

祖母の代から続く食堂の味で、高齢で店に来られなくなった常連客たちも支えたい。そんな思いもあって、一日も休まず、365日営業を続けることにしたのです。

常連客:「こういう仕事が好きだったんだろうな…。本当によく頑張るわ」「活発で、あの通りだ。あの通りで最高だよ」

■家族もリスペクト…「自慢のお母さんです」

早朝4時から、午後7時の閉店まで、まさにノンストップの大忙し。2人の娘と、夫の協力があってこそだと、理佳さんはいいます。

次女・朱里さん:「自慢のお母さんです。さすがに心配、体が…。365日ずーっと何年もやっているから。だから洗濯とか掃除は、お父さんと2人でやっています」

この日、年中無休の理佳さんの食堂が、日も高いうちに、なぜか暖簾を下げました。臨時休業でしょうか?

大慌てで理佳さんが向かった先は…。

長女・紗也花さん:「終わったよ」
西永さん:「えっ!?40分から…」
紗也花さん:「終わったよ、もう…」
西永さん:「アッハッハッハッハ…」

実は、長女・紗也花さんの成人式。晴れ姿を一目見たいと、わずか20分間だけ食堂を閉め、駆け付けたのです。

西永さん:「まぁまぁ、いつもこんな感じさ。絶対大事なとこ見られないんだ、私。家族も大事だけど、お客さんも大事なのさ」

こんな理佳さんを、家族はとってもリスペクトしているのです。

紗也花さん:「ここまで育ててくれて、ありがとうございます」「(Q.言わせたみたいに…)全然、思っています」

■小さな食堂に…わざわざ外国人が訪れる理由は?

そんな理佳さんが営む食堂には、なぜか、連日のように海外からもお客さんがやってきます。

西永さん:「これは、外国の人が置いていったお金。お土産というか」

壁には、外国人客が記念に置いて行ったというお金がズラーリ。

西永さん:「え?なんでウチ!?みたいな。珍しい食べ物あるわけじゃないし、なぜここに来るんでしょう…本当に思う」

理佳さんの食堂があるのは、観光地・富良野から、車で30分ほどかかる場所。旅行ガイドブックにも載っていない小さな食堂に、わざわざ外国人が訪れるのは、なぜなのでしょうか?

アメリカからの観光客:「こぢんまりした店だから入るのにビビったけど、ネットでとても高評価だったんだ」

マレーシアからの観光客:「ネットで評判が良かったんだ。ほら、星が5つもついている」

ネットの口コミには、「この家庭的なレストランを選んだのはラッキー!オーナーとスタッフはとてもフレンドリーでステキ!」など、理佳さんの食堂を絶賛する声が溢れかえっているのです。

プエルトリコからの観光客:「プエルトリコに住んでいます」

この日、SNSの評価を見て来店したのは、スティーブさんと妻・昌代さんの国際結婚ファミリーです。

西永さん:「(プエルトリコは)雪降らないですよね?」
昌代さん:「沖縄みたい」
西永さん:「暑いんだ!」

カリブ海にあるプエルトリコが、常夏の土地であると知るや、理佳さんは外へ…。

西永さん:「やってみるか~?こうやってやるんだよ。ヨイショ~!」

子どもたちのために、料理の手を止めて一緒に雪遊び!

西永さん:「(雪かき)スコップなんて、持ったことないでしょ?」

西永さん:「こんなことされたら、うれしいなって。自分だったら…と置き換えて考えている。だから言葉が通じなくても、喜んで帰ってほしい」

プエルトリコからの観光客:「あたたかくて元気。ニコニコ」

■始まりは…約6年の韓国人の“3万ウォン”

理佳さんの信念が垣間見える、こんなエピソードがあります。

西永さん:「始まりはね、韓国の人が3万ウォン(当時 約3000円)くれたの。『僕たちはきょう帰るから、3万ウォン(当時 約3000円)で、ご飯を食べさせてくれ』。せっかく上富良野町に来て、どこも食べる所がないなんて寂しい…」

6年ほど前に来店した、日本のお金を持っていなかった韓国からの観光客。気の毒に思った理佳さんが、おなかいっぱいの料理でもてなしたところ、大喜び。地元では両替できる場所がなかったため、思い出として壁に飾ったのが始まりなのだとか。

目の前のお客さんの、おなかと心を満たしたい…。そんな思いが、理佳さん本人も気付かぬうちに、小さな町の小さな食堂の評判を世界に広めているのかもしれません。

西永さん:「お・も・て・な・しさ」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp