感情コントロールと、体得する方法 #早稲田メンタルクリニック #精神科医 #益田裕介

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<本の紹介>
2022/8/5
精神科医の本音 (SB新書) 益田 裕介
https://www.amazon.co.jp/dp/4815616221/
2022/8/22
精神科医がやっている聞き方・話し方 益田 裕介 https://www.amazon.co.jp/dp/4866801921/

00:00 OP
01:20 感情のコントロールは技術
03:12 本能・感情 vs 理性
05:00 矛盾する様々な考えが浮かぶ
06:31 感情は8割正しいアルゴリズム
07:38 理性でコントロールする
11:11 技術を体得するステップ

本日は「感情コントロールと体得」というテーマでお話しします。

精神科に通われている患者さんは、感情のコントロールが苦手な人がたくさんいます。
不安に支配されて行動できなくなってしまう引きこもりの人や、気分の波が激しい人、衝動性を抑えることが苦手な人、怒りを抑えることが苦手な人、リストカットしてしまう人、過食嘔吐、アルコール、ギャンブル依存になってしまう人、いろいろな人がいます。
なかなか感情のコントロールが難しい、自分ではなかなかコントロールできませんと相談に来られるわけです。

うつ病や躁鬱病といういわゆる「内因性疾患」と呼ばれる病気であれば、薬物治療によってコントロールが利くようになるのですが、それ以外の病気の場合や、うつ病、躁うつ病であったとしても、この感情コントロールという技術を学ばなくてはいけません。

■感情のコントロールは技術

感情のコントロールというのは、誰しも身につけられる「技術」ではあるのですが、生まれつき得意な人と苦手な人がいます。

運動神経などと一緒です。数学ができる、勉強ができるとかとも似ているかもしれません。
生まれつき得意な人は得意だし、苦手な人は苦手なのです。

例えば境界性パーソナリティ障害、人格障害と呼ばれる疾患の人たちは、生まれつき感情コントロールがかなり苦手です。
下手をしたら赤ん坊の頃から感情のコントロールが苦手で、育てにくい子供だったというようなことが知られています。
ですから、生まれつき感情コントロールが得意な人と得意じゃない人がいる。そ
れは体質としてわかっています。

ただ、薬物治療だけでは治りません。
なので技術として身につけていきましょうということになります。

この話をするときに、どういう形でイメージを持ってもらえばいいのかというのは常に僕ら精神科医は考えます。
ドクターによって説明の仕方は異なるのですが、僕も患者さんに合わせていろんな小話というか説明の話を考えたり、こういう風に伝えたらわかりやすいかなという、科学的というよりは科学半分・創作半分みたいな話をします。

脳というのは科学的にまだわかってないことがたくさんあるので、科学的な事実とそこまで違わない範囲内であれば、ある程度患者さんにわかりやすいように創作して伝える、デザインし直すことは許されているところがあります。

■本能・感情 vs 理性

どういう風に感情やコントロールすることをイメージしたらいいのかということですが、僕は最近こういう説明の仕方をしています。

今でこそ「本能・感情」と「理性」というのは分けられるものではないと言っているかもしれないですが、少し前までは感情・本能と理性は別のものとして分けて、理性によって感情や本能的なもの、そういう原始的な力を抑えるべきだという考え方が主流でした。

ですが、こういう理性絶対主義というのは人類を誤った方向に導きました。
例えば戦争を起こしてしまったとか、人間の万能感、西洋的というか理性絶対主義のせいで戦争や世界大戦という悲劇が起きてきたわけです。

だから理性というのはそこまで絶対的なものではないし、理性と感情は分けられるものでもないということがわかってきて、だんだん資本主義の発展とともに理性と感情はぐちゃぐちゃになって理性絶対主義の地位がどんどん下がっています。

でもかつては、本能や感情と理性は戦って、理性というものを尊重するような文化背景がありました。
今はやりたいことをやればいい、好きに生きればいいなど、感情や本能を曖昧に許しているところがあります。
そもそもそういう考え方があったんだよということです。

■矛盾する様々な考えが浮かぶ

人間の脳の中というのは、そもそも矛盾する様々な考えが浮かぶものです。
脳の中は忙しいんですよ。
「私の頭の中は混乱してるんです」「何かぐちゃぐちゃしているし、憎んでいると思ったら愛しているし、そう思ってたらなんか過去の嫌なことを思い出すし、私の頭の中がぐちゃぐちゃしてるんです、病気でしょうか」とよく言われるのですが、病気のこともあれば、そもそもみんなそうなんだということもあったりします。

脳の中はぐちゃぐちゃしているのですが、ある程度理性とか意識のフィルターをかけることによって、一つの心ということになっています。でも本来は人間の心の中にはたくさんの心があって、それがぐちゃぐちゃ動き回っていて、だけど意識に上がってくるときにはなぜか1つの「人格」というものができあがっている。
そういう不思議な現象なんですよね。

でももう少しぐっと踏み込んで行って内側を集中して見ていくと、自分の中にはいくつもの心があったり、いくつもの矛盾した考え方が散らかって、いろいろな方向に動いているというものが観察できます。

そういう中でどういう意見を重視するのか、どういう考え方、どのベクトルを重視するのかというのが理性がやるべきことです。

■感情は8割正しいアルゴリズム

そもそも感情というのは8割正しいアルゴリズムみたいなものです。
だから生物が生きる上で感情や本能に従っていればだいたい当たります。

寒いと思えば羽織った方がいいし、喉が渇いたと思ったら飲んだ方がいい、お腹がすいたと思ったら食べた方がいい。
理性で「いやいや、違うだろう」とやったら喉が渇いて死んでしまう、熱中症になって倒れてしまう。
でもだいたいそれに従っていれば合っているのです。
それは何億年、何百億年とかけて、その生物が本能や感情という形で生物的に有利なものをアルゴリズムとして蓄積してきた結果なのです。

ただ、間違っていることもあります。
食べたいなと思って食べていたら、糖尿病になる、太りすぎる。
食べたいなと思って食べたり、休みたいなと思って休んでいたら、ライバルとの競争に負けてしまって受験戦争で負けてしまう。

■理性でコントロールする

感情に支配されていたらうまくいかないこともあります。
悪い男だけ好きになってしまいズルズル続いてしまうのも、感情に負けているということです。
共依存のようになってしまっているのも悪いことなのです。

だから感情だけに支配されず、やはり理性によってコントロールしてあげなければいけないということがあり、精神科はその理性の力を強めてあげる。
感情と理性を分けてあげて、理性的に考えていく力をサポートするのが精神科の役割だったりもします。

いやいや益田はね、感情と理性では理性を重視する方が良いと言うかもしれないけど、感情の方が大事なんじゃないか、人間的なんじゃないか、悪い男だと理性で思っていても好きだったら仕方ないじゃないか、好きという気持ちを大事にしようよと思うかもしれません。
その方が幸せなんだと思うかもしれないけれども、基本的には理性を重視した方が良いです。

正しい理性になるようにバイアスを取ってあげる。
バイアスを取って、合理的に冷静に判断できるようにサポートするのが精神科の役割です。

そもそも感情や本能のアルゴリズムでは判断できないことを判断するために、大脳皮質というか理性があるわけです。
感情に支配されている動物たちはたくさんいますよね。
でも人間だけが感情に支配されず、理性の力で抑え込んで感情とは真逆の行動を取ることができるようになりました。

走って疲れて、もう嫌だなと思っても走り続けて餌を取るとか。
それは人間だからできることなのです。
これが人間の「強さ」であって、だから人間というのはこれだけ繁栄しているのです。

もし人間の理性がそんなに役に立たないものだったら、感情に支配された方がいいのであれば、他の動物の方が人間よりもはるかに強い筋力があったり、強い生命力を持っているので繁栄しているはずです。

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感情に支配されず、淡々とやる
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一般の方向けに、わかりやすく、精神科診療に関するアレコレを幅広く解説しています。動画における、精神分析や哲学用語の使用法はあくまで益田独自のものであり、一般的(専門的)な定義とは異っているところもあります。僕がもっとも説明しやすいとたまたま感じる言葉を選んだだけなので、あまり学術的にとらないでいただけると嬉しいです。
   早稲田メンタルクリニック院長 益田裕介

【自己紹介】
益田裕介
防衛医大卒。陸上自衛隊、防衛医大病院、薫風会山田病院などを経て、2018年都内で開業。専門は仕事のうつ、大人の発達障害。といいつつ、「なんでも診る」ちょっと変人よりの町医者です。
趣味は少年ジャンプとお笑い。キャンプやスキーに行きたいです。
2020年6月5日より断酒継続中。

【参考】
厚労省みんなのメンタルヘルス https://www.mhlw.go.jp/kokoro/
カプラン 臨床精神医学テキスト第3 https://www.medsi.co.jp/products/detail/3509
倫理規定について https://note.com/mentalyoutubers/n/nb130991f3fa4

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