桂文珍「老婆の休日」をお届けします、お楽しみ下さい。落語をBGMの様に気軽にお楽しみ下さい。概要欄ではお囃子のBGMの無い動画の情報もお知らせしています。

2022/03/27 に公開
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もし、お囃子のBGMが気になるようでしたら、BGMのない動画を作って公開しています。

【healing.music.bgm.channel】

https://www.youtube.com/channel/UCdmCELjErFRdq_YUxvTu3nw

文珍さんの落語を総集編として5本揃えていて、単独の噺しも追加中です。

長い総集編~短い単独の噺まで
演目はほぼ同じだけ網羅しています。

総集編は、概要欄に演目別のタイムラインも設けてありますので、自分の気に入ったお噺が見つけやすいと思います。

お囃子のBGMが気になると言う方は、そちらを試してみて頂けますように、宜しくお願いします。



元気なりゃこそ病院に来られるんじゃ?!
高齢社会への皮肉を病院の待合室を舞台に
思い切り滑稽化した文珍新作の代表作「老婆の休日」。

これで笑えなければ病院へ行きなはるか?

【老婆の休日】

婆がケーキ屋さんに来て、「これ下さい」とショウケースを指差していますが、店員さんには見えませんから、「名前を言って下さい」、「ヨネです」。帰って来ても、パクパクと急いで食べています。ケースを見ると『お早くお召し上がり下さい』。

 最近のレストランでも外食チエーンでもアルバイトを使っていますから定型文を覚えさせます。「いらっしゃいませ。アリガトウございます。大ですか、小ですか。お持ち帰りですか、こちらでお召し上がりですか」。一日中そればっかりです。そこに老婆がトイレを借りに行ったのです。もうお分かりですね。

 病院でも同じです。「誰か呼んでるよ。私は後で良いんです。みんなと、ここで話が出来るだけで良いんです。元気なればこそ、病院に来れる。今日はタネ子さんの顔が見えんね。え?病気?可哀相に、早く良くなって病院に来なくては。君子さんは」、「はい」、「どうしたの?」、「身体中が痛くて。頭を押さえても、お腹を押さえても、足を押さえても、痛いので診てもらったら・・・、指の骨が折れていた。隣の人の肩を触っても痛い、ようやく人の痛みが分かるようになった」。

 「幾つになった。八十八やったら、ベージュやな」、「着物の色はグレーや」。 「連れ合いは?」、「亡くなりました。酒を飲まなければ良い人でしたが、倒れてクダ巻いて、病院に入ったらクダに巻かれて。病室に入ると機械の音がイヤで、ピィ、ピィ、ピィ、と言う音が、ピーーーとなった時、新米の看護婦が『終わりました』と言いましたので、失礼だろうと思いましたが心の中では『やれやれ』と思いました」。

「お子さんは」、「六十になりました。生まれた時は玉のような児でしたが、今ではシワだらけで老後が心配です。ひ孫もいまして、年金目当てに来ますが『大きなお婆ちゃん、いつ死ぬの』。お前一人の考えか?誰に頼まれて来たんじゃ」。

 「あんたの髪の毛綺麗に染まりましたな。何を使ったの」、「へへへ、染めたように見えます?これはガスです。ガスの栓をひねってからマッチ探して、それからマッチ擦ったらボーンといって、ジジジとなって、婆でも爺ジとなってしまった。気を付けなアカンよ、我々燃えやすいんだから」。

「首に提げている印鑑は何?」、「昔のことは良く覚えているが、最近のことは直ぐ忘れる。わしゃ、ご飯食べていないというのに『食べた食べた』いう。そしたら、嫁が『これからは食事したら判を押す』ことに・・・。これだって良くはない。だって押したこと覚えていない」。「あんた来てはりますな」、「いえ、歩く度にオナラが出て。その力で前に進んでいるよで・・・」。

 「呼んでますよ」、「今日は若先生なんです。この年になると若い人に触ってもらえるのは病院だけです。では、お先に」。「今日はどう致しました」、「喉がガラガラして・・・」、「風邪引いたかな?シタ出して」、「えぇ?」、「シタ出して下さい」、「爺様が死んで、どなた様にもお見せしたことがありません。ひょっとしたら塞がっているかも・・・」、「シタ・シタ舌を診せてください。下を見て喉が診られますか」、「判っていますよ。若先生がどんな反応するか楽しみで」、「若いもんをなぶりなさんな」。

 大騒動で御座います。老婆の休日でした。

#落語 #BGM #rakugo