「どうしてこんなに悲しいんだろう」吉田拓郎(伊藤沙莉)

2022/07/30 に公開
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1971年11月20日にリリースした2ndオリジナル・アルバム『人間なんて』のB面の1曲目に収録されている。
当時吉田拓郎は高円寺の妙法寺横のアパートに住んでいて、新宿で飲んで帰って、ジェームス・ブラウンのバラードを聴いていたら、妙にしんみりした夜で、無性に染み入る曲を書きたくなってギターを手に取ったら、その頃ハマっていたコード進行で一気に書けたという。1976年のアルバム『明日に向かって走れ』にリメイクバージョンが収録されている。こちらの編曲は松任谷正隆。


作詞・作曲:吉田拓郎(当時はよしだたくろう)
アレンジ:加藤和彦

このアルバムの中の『結婚しようよ』が大ヒット。これによって、いわゆる関西フォークを中心としたアングラ的な反体制フォークから、フォーク・ミュージックという分野が確立して、やがてニューミュージックへと移っていく過渡期だった。泉谷しげる、井上陽水、かぐや姫などが売れ出してきた時代だ。

 悲しいだろう みんな同じさ 同じ夜をむかえてる
 風の中を 一人歩けば 枯葉が肩で ささやくョ
 
冒頭のこの歌詞で、「みんな同じなのか、」とちょっと安心させてくれる。天下の拓郎でも悲しいときはあるし、当時の初期の拓郎の「音楽で飯を食う」という覚悟の名の下に上京したての頃の孤独さに比べれば、自分が感じる孤独なんて大したことないだろうと思える。

 人の心は 暖かいのさ 明日はもう一度 ふれたいな
 一人ごとです 気にとめないで ときにはこんなに思うけど
 明日になると いつもの様に 心を閉ざしている僕サ
 
ここで「人の心は暖かい」と言っている。そして明日もまた人の暖かい心に触れたい(慰められたい、優しくされたい、癒されたい)と言っている。きっと人間の本音がここで出たのかもしれない。
最後に「明日になるといつもの様に心を閉ざす」とある。きっとこんな感情は日常茶飯事で毎回本音を押し殺して、心を閉ざしていたのかもしれない。

強いからこそ自分の弱さを知っているのかもしれない。

それでも僕は一人を選んでしまう。
生きていくって、「どうしてこんなに悲しいんだろう」。

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