特集「キャッチ」課題は『再犯率』 女性刑務所の新たな取り組み

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特集「キャッチ」です。佐賀県鳥栖市に、九州で唯一、女性の受刑者だけを収容する刑務所があります。受刑者の半数以上が2回以上服役しているというこの刑務所で、罪を繰り返させないための新たな取り組みに密着しました。

■点呼の様子
「2室番号!」
「1、2、3、4、5」
「5名!」
「おはようございます。」

佐賀県鳥栖市の麓刑務所は、九州新幹線の新鳥栖駅から車で約5分の場所にあります。現在は、20代から80代まで約200人の女性受刑者が制服の縫製などの刑務作業に従事しています。

受刑者の平均年齢は、51歳です。万引きなど窃盗の罪を犯した女性が全体の4割を占め、3割以上が覚醒剤に関する罪です。

■受刑者Aさん(70代)
「罪名は窃盗です。いわゆるスーパーでの万引きです。」

70代の受刑者Aさんは、60歳を超えて自宅近くのスーパーで万引きを繰り返すようになり、やがて逮捕されました。

■受刑者Aさん(70代)
「(万引きしたのは)最初は夫に対するストレスからだったと思います。夫が欲しいものだけは『絶対買ってこい』っていうような感じで言われていたから。本当は私は『もう買いたくない』と思ったら取ってしまったっていうか。」

刑務所に入るのは、これが3度目です。出所後も、万引きがやめられなかったといいます。

■受刑者Aさん(70代)
「この前、今度の逮捕された瞬間も、やっぱりここの先生方の顔がばーっと浮かんできて、ああやってしまったって後悔がすごかったです。自分の意思が弱いのと、本当に悪かったと毎日反省しています。今度出たら、もう絶対二度としないと信念は持っています。」

Aさんのような受刑者は、決して珍しくありません。麓刑務所に収容されている受刑者のうち、実に半分以上が2回以上服役しています。『再犯率』の高さが深刻な問題となっています。

■受刑者Bさん
「私は弁償して、その手紙を書きました、謝罪の手紙を。(Q.返事は?)いえ、来ません。」

これは、万引きなど窃盗を繰り返した受刑者向けの講習です。教材は、万引き被害が生活や仕事にどれほど影響を与えたのかを被害者が語るDVDです。自らが犯した罪によって、被害者がどんなに苦しんだのかを考えてもらう狙いがあります。

■受刑者Bさん
「心が痛いです。本当に申し訳ない。浅はかなことをしました。ごめんなさい。」

■受刑者Cさん
「こんなに店が大変なことやったんやなと思って、やっぱり自分自身も、もうちょっと考えて行動しないといけないと思いました。」

受刑者たちは反省の態度を示しています。しかし、「二度と罪は犯さない」という気持ちだけで再犯を防ぐのは難しいといいます。

■麓刑務所・村崎有処遇部長
「(受刑者は再犯について)『自分の弱さです』とか、『意思が弱かったからです』とか言うんですけど、ただ犯罪の背景がいろんな複雑な事情が絡み合っていると、壁に当たったときに、またそこでどうしようもなくなって犯罪にいたってしまうというようなケースもあるんですね。社会に出た時に、どういうふうな生活をしていかなければいけないのか。就労もしなければいけないし、その環境づくりっていうのは、すごく大事なんじゃないかなとは思うんですよね。」

受刑者が服役中から社会復帰後の環境を少しずつ整えられるように、麓刑務所では、新たな取り組みを始めました。

■企業担当者
「資格があれば、体力的に大丈夫でしたら入っていただける。」
■受刑者
「すみません、お給料は?あとは社会保険とか。」

この日行われたのは、出所後の就職に向けた企業説明会です。これまでも説明会はありましたが、企業の担当者に待遇面などを確認できる個別のブースが設けられたのは、この日が初めてです。面接の意味合いもあり、出所前に仕事が決まる可能性もあるということです。

再犯を防ぐための新たな試みは、ほかにもあります。

■タペストリーを作る様子
「オレンジを切って、ピンクを切る、4つ。」

刑務作業の終わりに受刑者が始めたのは、タペストリーと呼ばれる壁掛け作りです。段ボ-ルやペットボトルなど廃材を使い、同じ作業場のメンバーと作品を作り上げます。

■タペストリーを作る様子
「結構難しい?」
「手がかじかんで。」
「あーいい感じいい感じ、おー。」

ふだんは受刑者同士で自由に話すことはほとんどありませんが、タペストリー作りのときは、刑務所とは思えないほど、にぎやかで楽しそうな雰囲気です。刑務官に、とがめられることもありません。

■受刑者Dさん
「いやうれしい。頑張ったみんなで。楽しかったー。」
■受刑者Eさん
「時間がたつのが早かったのと、みんないろんな考えで作っていたけれど、一つに最後まとまったら、すごくいいものができたなって。」
■受刑者Dさん
「私も帰ったら子どもとやろう。仲良くなれるかな。」
■受刑者Eさん
「飾ってあるのを本当は見に行きたいけど、見に行けんもんね。」

みんなで協力して一つの作品を仕上げた経験は、受刑者たちが社会に戻った後もプラスに働くと、麓刑務所では考えています。

完成したタペストリーは去年の暮れ、佐賀県鳥栖市の鳥栖市役所に飾られました。市民に理解を深めてもらおうと、麓刑務所の提案で始まった市役所での作品展示は、これが2回目です。

■市民
「刑務所の人が作ったとは思えない、かわいいね。なんかホッとするような絵で、更生とか役立つと非常にいいなと思う。」

大きな課題となっている『再犯』の現状に、歯止めをかけられるのか。罪を償う場所としてだけではない、刑務所の役割が注目されています。





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