大量のプラスチック製容器は“資源ごみ”…でもコストとエネルギーをかけて維持しているリサイクルの実態は!?【コレ知ら】

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収集車から大量に吐き出される、ごみ。
これは全て、私たちがリサイクル目的で分別したプラスチック製容器包装、いわゆる資源ごみです。

最終的にどんなものに再生されているのか。

(名古屋市民)
「全然わからない…何になるんだろう?」
「何かに変わるのかなとは思うけど、とりあえず分別しなくちゃというのが優先」

意外と知られていない、実情を追跡しました。


私たちが生活する上で必ず出てくる、ごみ。
これを減らすために始まったのが、資源への分別でした。

(松原武久名古屋市長(当時))
「埋め立て事業を中止するしかない」

年間100万トンものゴミが出ていた名古屋市は、多くの渡り鳥も来る干潟の一部に処分場を作ろうとしましたが、環境保護団体や国の強い反対を受け、計画は中止に。

そこで1999年、ごみ非常事態宣言を出し、初めて本格的な分別回収に乗り出したのです。

(名古屋市民)
「発布スチロールは不燃ごみだと思ったけど」
「発泡スチロールはプラスチック容器包装だ」
「本当に難しい」


今や17種類の分別を義務付け、中でも、紙とプラスチックの容器包装は、ごみではなく“資源”という位置付けにして、リサイクルを進めています。

(名古屋市 環境局 川浦雄介 主査)
「分別をするということは、ごみを価値のある資源として活かすということになります」
「資源を収集・選別する経費としては年間で約47億円かかっています」

名古屋市では年間24万トンの資源を回収し、そしてリサイクルに47億円もの税金が投入されています。

莫大な費用をかけて行われている資源ごみのリサイクル。
一体何が出来ているのか?


資源ごみの中でも多いのがプラスチックの容器包装。
回収日に現場をのぞいてみると…

Q.中身はどうですか?
(名古屋市 中村環境事業所 加藤英秋さん)
「これはプラスチックの容器包装がきちんと入っていますが、中には可燃 ごみやペットボトルが入っていることはよくあります」

プラ容器の特徴は、量だけでなくリサイクルの難しさ。
古紙になる紙、同じ缶や瓶に再生される空き缶や空きビンと違い、プラ容器は、同じプラ容器にリサイクルすることは出来ません。

(名古屋市 中村環境事業所 加藤さん)
「プラ容器に関しては、同じ容器に戻るかというとそうではない。違う製品に生まれ変わっているとは聞いている。リサイクルされているのは間違いないと思う」


では、どうなっているのか。

まず訪ねたのは、港区の処理施設。

(神鋼環境メンテナンス 田中良征 所長)
「こちらが名古屋市から集めていただいたプラ容器のごみになります」

Q.すごい量ですねこれ。全部でどれくらいの量があるんですか?

「これでざっと20トンくらいですかね」


市内で収集される全てのプラ容器がこの施設に集まります。
量にして、1日におよそ100トン。
この山の5倍の量が毎日出ています。

機械や手作業でさらに分別し…

(神鋼環境メンテナンス 田中所長)
「プラスチックでも容器でないものとか、汚れがひどいとリサイクルできないので、汚れがついているプラスチック、そういったものを取り除く」

こうして選別されたプラ容器が最終的に圧縮梱包機でこの四角い塊に。
これがさらにトラックに積み込まれ運ばれていきます。


そして…

滋賀県甲賀(こうか)市のリサイクル工場。

(記者)「トラックにびっしりと積まれています。ものすごい量です」

Q.これはどこから運ばれてきたもの?
(エコパレット滋賀 為井章宏 工場長)「名古屋市です」

この日も名古屋市からおよそ9トンのプラ容器が運ばれてきました。

名古屋市は1トン当たり500円を支払い、プラ容器をここに引き取ってもらいます。
資源と言っても処分にお金が必要なごみと同じ扱いと言えます。
ここで塊を一度バラバラにして…また分別。

機械が樹脂の種類を判別し、製品に使えるものを選びます。
ここではじかれたものは、製鉄工場などで燃料に使われます。
さらに細かくごみを刻み、脱水や圧縮をして出てきたのが…
この、何やら灰色っぽいたくさんの塊。

Q.これで完成まで何パーセント?

(エコパレット滋賀 為井工場長)
「100パーセント完成です。材料として」

これが一体、何の材料になるのか?


工場のさらに奥では…

(エコパレット滋賀 為井工場長)
「(200度の熱で)溶けた樹脂を金型に注入して、冷やして完成品が出来上がりです」

その完成品が…
これはフォークリフトで物を運ぶ際に台として使われる「パレット」。
製造・物流など多くの現場で欠かせない資材です。


1トン当たりの販売価格は10万円程度になりますが、
回収や分別などリサイクルのコストはおよそ13万円。
いわば差し引き3万円の「赤字」が、プラスチックを大量消費する今の社会を支えている形です。

(名古屋市 環境局 川浦主査)
「リサイクルにはお金がかかってしまう。お金をかけてリサイクルするのではなく、ごみ自体を減らしていく」

多額の費用とエネルギーを使って成り立っているリサイクル社会。
そもそも家庭や企業が出すごみそのものを減らすことが何より大切なのは、言うまでもありません。


2022年11月3日放送 CBCテレビ「チャント!」より
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