さかなクンとお伝えするSDGs企画。瀬戸内海に浮かぶ人口約250人の香川県の本島に、「海を休ませる」をコンセプトにしたレストランがあります。年々、漁獲量が減る中、海と共存を試みる若い漁師たちの挑戦を追いました。
■日本の漁獲量4分の1に激減「漁師では生活できない」
香川県の丸亀港からフェリーで約30分。瀬戸内海の島「本島」。
4月20日に解禁されたサワラ漁を祝う祭りが行われ、島を訪れた人は、旬のサワラを堪能しました。
この祭りを中心となって手がけたのが、漁師の大石一仁さん(27)と妻の佑紀さん(27)です。
漁師 大石一仁さん
「魚に触れてもらったり、僕たちがちゃんと説明して、食べてもらえるところまでつなげていけたら、子どもたちの魚離れは解決していくのではと」
この日一番の盛り上がりを見せたのは、サワラの解体ショー。子どもたちは真剣な眼差しで見守っていました。
島の人口は約250人。65歳以上の高齢化率は6割を超えていて、若者の多くは、進学や就職で島を離れていきます。
島の暮らしを支えている産業は水産業ですが…
漁師(70代)
「もう魚もおらんな、タコもおらんな」
漁師(50代)
「キスにしたって、なんの魚にしたって減ってしまった」
実際、瀬戸内海で獲れる魚の量は40年前と比べて4分の1にまで激減しています。
漁師の妻
「漁師ではもう生活できないのでは。(Q.そのくらい魚は減っている?)単価も安いし、魚が減っているわりに相場は変わらない」
■漁に出ない漁師の選択「海を休ませるレストラン」とは?
漁師の生活が立ち行かなくなる前に、かつての豊かな海に戻したい。そんな思いから大石夫妻が開業したのが、こちらのレストラン。
その特徴は…
喜入友浩キャスター
「すごくさっぱりしていて美味しいです。何の魚だろう」
白身魚のセトダイ(瀬戸鯛)やカサゴ。これらは旬を外していて、出荷しても価値が付かない未利用魚と呼ばれる魚です。
漁師 大石一仁さん
「たまたま取れちゃって、漁師さんから相談があったので、僕たちが買いますと」
海の資源を余すところなく活用。また、飲食店の名前を「海を休ませるレストラン」と名付けました。
その訳は…
中学を卒業してすぐに漁師となった大石さん。曾祖父の代から続く4代目が今初めて挑戦しているのが、海での養殖です。
喜入友浩キャスター
「ここでは何を?」
漁師 大石一仁さん
「マサバの養殖をしています」
5m四方のいけすには、1000匹を超えるサバ。悪戦苦闘の連続でしたが、小指ほどの大きさだった稚魚が8か月で20cmを超えるまで成長しました。
この養殖で育ったサバを「海を休ませるレストラン」で提供しているのです。
漁師 大石一仁さん
「魚がどんどん減ってきている理由はたくさんあるが、そのなかの一つに、漁師による乱獲、いわゆる取りすぎという問題が出てきている。そこを解決するために、漁に行く日数を減らしていかないといけない」
養殖での採算は合いませんが、始めてから8か月、漁に出る日数が30日間減ったそうです。
漁師 大石一仁さん
「海っておもしろい。漁に出ない期間が長ければ長いほど、次に漁したらめっちゃ取れるんですよ。海を休ませた先は、昔の豊かな海が戻っていると思う」
■さかなクンと考える 日本の海と“多種多様”な魚
喜入友浩キャスター:
今回、「海を休ませるレストラン」を取材しましたが、漁師の大石さんは「海は休ませれば休ませるだけ魚が戻ってくる」、「それを多くの漁師はもうわかっているはずだから、こうした取り組みが広がってほしい」と話していました。
東京海洋大学名誉博士 さかなクン:
私も全く同じ思いで、海が休むと魚も回復する力があると思うんですね。自然の回復力ですね。
今回、「人も自然もお魚も休みがたいせつ」ということで、絵を描かせていただきました。
今ゴールデンウイークですが、こういった休み期間があると、元気に回復できますよね。海も一緒ということです。
例えば、イセエビやアワビなどでも産卵期間は禁漁期間としてちゃんと休ませる時間があるんです。その時間があると、ちゃんと卵も安心して産んで、資源がまた回復できるわけです。
喜入キャスター:
今の日本の海はどういう状況なのか。こちらのグラフは日本の海の漁獲量なんですが、1984年は約1150万トンだったのが、2022年には約4分の1の295万トンあまりになってしまっているという状況なんです。
東京海洋大学の勝川俊雄准教授によりますと、「この減少傾向でいくと『2050年にはゼロになる』と話しています。
小川彩佳キャスター:
ゼロになるというのは、今後、私達は魚を食べられなくなってしまう日が来るということですか?
さかなクン:
実はこれには二つの意味があります。一つは、私達が普段食べている魚がこのままではゼロになってしまうかもしれないということです。でも実は、魚というのはものすごく多種多様で、このグラフにある魚は、私達が普段食べている魚、いわゆる「水産重要種」で、カツオ、マ…(
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