King Gnu 井口理【怪奇行動】

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King Gnu
【国】日本
【形態】4人組ロックバンド
【所属レーベル・事務所】アリオラジャパン
【公式ファンクラブ】『CLUB GNU』
【メンバー】
・常田 大希 (つねた だいき、1992年5月15日(28歳) - 、長野県伊那市出身) - ギター、ボーカル、チェロ、ピアノ、作詞作曲
・勢喜 遊(せき ゆう、1992年9月2日(28歳) - 、徳島県阿南市出身) - ドラムス、コーラス、サンプラー
・新井 和輝(あらい かずき、1992年10月29日(27歳) - 、東京都福生市出身) - ベース、コーラス
・井口 理(いぐち さとる、1993年10月5日(26歳) - 、長野県伊那市出身) - ボーカル、キーボード
【井口理の来歴】
バンド内ではムードメーカー的な存在。
三男一女の4人兄弟の末っ子で、次兄は声楽家(バリトン)の井口達。理本人はテノールである。最も好きなミュージシャンは七尾旅人。他には、親の影響から井上陽水、チューリップ、オフコース、布施明、尾崎紀世彦、ポルノグラフィティ、aikoなどを聞いていた。特にポルノグラフィティは、ラジオで勝手に20周年記念企画として、自身がカラオケで歌うだけの企画を行ったほどである。バンドメンバーの常田大希とは小学校、中学校の幼馴染という仲である。中学時代合唱部に所属し、常田と共にNHK全国学校音楽コンクールの全国大会に出場。特別仲が良かったというわけでもなかったが、常田がすでに中退していた東京藝術大学の学園祭にバンド演奏のため訪れたところ、出店の客引きで歌っていた井口と奇跡的に再会する。それがきっかけで常田から「曲をレコーディングするからコーラスをやってくれない?」と誘われ、Srv.Vinciのメンバーとなる。大学には入学したものの、クラシックや声楽に向いてないと考え、高校時代はバンド経験もあったことから、何か人前に出られればいいと模索。劇団に足を運んだり、ミュージカルや演劇に役者として出演したりしていた。オールナイトニッポン0を担当していた時には、前枠を担当していたナインティナインの岡村隆史から「ヌーさん」と呼ばれていた。

【テガミ】

これは、友人のオカダくんの体験談だ。彼の自宅の郵便受けに、毎月25日になると奇妙な手紙が投函されるという。切手の貼られていない白い封筒の中に、赤色の折り紙が小さく畳まれて入っている。開くとそこには子どものような崩れた字で「私に会いに来て」とだけ書かれているというのだ。オカダくんのマンションはオートロックだが、集合ポストで郵便受けは1階にあり、外部の人間も立ち入ることは可能だ。

「もう4カ月続いているんだ」

久しぶりに飲みに誘われた居酒屋で、彼はその手紙を見せてきた。気味が悪いが、実害がない現状で警察に届けても対応は望めないだろうと彼は言う。マンションの管理会社には「ポストに妙なイタズラをされる」と電話し、巡回を強化すると言われたそうだが、管理人も通いで常駐している訳ではなく、そちらもアテにはならないとため息をついた。

「どう思う? 大学じゃミステリクラブだったんだろ、犯人を推理してくれよ」

冗談めかした口調も、どこか空元気に聞こえる。

「うーん……封筒にも折り紙にも別に特徴はないし。文面は女っぽい感じだけど、昔の彼女とかじゃないの?」

普通の便せんではなく、「折り紙」を選んでいることが差出人の正体のヒントなんじゃないか、と私は振ってみた。だがオカダくんは、頭を掻くばかりだった。

「25日って日付には何か心当たりはないの? 例えば、元カノが君のことを忘れられなくてこういうことをしてて、25日はふたりの何かの記念日だったとか」

「別れた女との記念日なんて覚えてないからなぁ」

そう言ってオカダくんは、半ば困ったように、半ば自身の女性遍歴を誇るように笑った。その月の25日の夜、オカダくんから電話がかかってきた。

私が、「手紙の主が25日に来ることは分かってるんだから、今月はその日は会社を休んで1日中、郵便受けを見てたら?」と言ったのを真に受けた彼は、有休をとって日付が変わる直前からずっと、エントランスで集合ポストを見張っていたという。

『でも、今日はそれらしいやつは現れなくてさ。日付も変わるからと思って部屋に戻ったら……』

オカダくんの声は震えていた。今度は部屋の玄関の隙間に、先回りするように例の手紙が刺さっていたという。

『もしかしたら、相手は人間じゃないのかもしれない……』

「そんな訳ないじゃん」

彼がことのほか、怯えているので私は明るく言ってみせる。

「キミが見張ってるのに気づいて、郵便受けに入れるのをやめただけじゃないの?」

『じゃあ、犯人はマンションに住んでるやつってことかよ? それはそれでヤバいだろ』

「オートロックのマンションって言っても、住んでる人についていって中に入ることはできるしさ。オカダくんも、ポストは見てても入ってくる人までいちいちチェックはしてないでしょ? ……それとも、相手がこの世のモノじゃないとして、誰か死んだ人に恨まれる覚えでもあるの?」

『……それは、ないけどさ』

話しているうちに落ち着いてきたらしい。来月も様子を見て、手口がエスカレートするようならまた警察に行った方が良いと私が言って、通話は終わった。その翌月の25日のことだ。仕事が遅くなったオカダくんは、家路を急いでいた。彼の自宅マンションは大通りから一本入ったところにあるのだが、その、マンションのすぐ前の路地に黒いワンボックスカーが道を塞ぐように停まっていた。オカダくんは舌打ちして、体を斜めにして車の脇をすり抜けようとする。その瞬間、車のスライドドアが開いて、オカダくんの体は中に引きずり込まれた。ドアが閉められ、オカダくんの背後で声がした。

「あの子に会いに行こうね」

それきりオカダくんは失踪した。ご両親が上京してきて尋ね人のビラを配ったり、友人知人に話を聞きに回っていたようだが、彼が見つかったという話は聞こえてこない。これでオカダくんの話は終わりだ。尻切れトンボだが、現実なんてこんなものだ。