【密着】山岳遭難救助隊「富士山の2つの異変」死者は去年の倍以上…なにが?【サタデーステーション】(2024年9月7日)

2024/09/08 に公開
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9月10日の閉山を前に、7日も富士山頂付近では、救助要請が…番組では、登山者の命を守る山岳遭難救助隊に密着。相次ぐ救助要請の裏には、例年とは違う、“2つの異変”がありました。(9月7日OAサタデーステーション)

■閉山まで3日 静岡で新たな死者も…

閉山まで3日となったきょうの富士山、今シーズン、既に17万人以上が登っています。山頂付近では9月とは思えないほど冷え込み、5日の最低気温は1.5℃。昼夜の寒暖差が激しく、高山病や低体温症など、体調を崩しやすいため、命の危機に晒されることもある危険な登山。7日も埼玉県狭山市の56歳男性が山頂付近で意識を失い、その後、死亡が確認されました。今シーズン、静岡側はこれで6人が死亡。山梨側でも3人が亡くなり、合わせて9人。去年の2倍以上です。
なぜ今年、このような異常事態になったのでしょうか?

■異変1「ゲリラ雷雨による悪天候」

サタデーステーションが向かったのは富士山の4つある登山ルートのうち静岡側にある富士宮ルート9合目。
標高3460メートル、9合目の山小屋に常駐しているのが、静岡県警の山岳遭難救助隊です。9人もの死者が出た背景には例年とは違う“2つの異変”が…。1つ目の異変は、頻発するゲリラ雷雨です。悪天候の場合は、例え要請があっても救助に向かえないこともあるといいます。

静岡県警山岳遭難救助隊 渥美聡孝隊員(43)
「天気が悪ければ現場に着く救助の方も時間もかかってしまうので、もしかしたら救助時間がかかって助けられなかった部分もあるのかもしれない」

■異変2「山梨側→静岡側へ流入」

そして、もう1つ背景として考えられるのは入山規制を行った山梨側からの流入です。今年のお盆休み、山梨側の登山客は去年よりも1割ほど減少。静岡側は、およそ1.5倍増えています。「初心者向け」山梨側・吉田ルートから「勾配が激しく難しい」静岡側の富士宮ルートに人が流れていることで、ケガ人も相次いでいます。転倒する要因の1つは下山ルートから外れてしまうこと。下山ルートから外れてしまうのはすぐ近くにある運搬用ブルドーザーの専用道路に迷いこんでしまうからです。

そんな中、救助要請をしたのは82歳の男性です。

報告・富樫知之ディレクター 静岡・富士宮ルート9合目
「右足でしょうか、ズボンには血の跡が見えます。普通に立たれていますが、大丈夫なのでしょうか」

男性は転倒した際、右膝に岩が刺さったといいます。救助隊が応急処置をします。

静岡県警山岳遭難救助隊 岩崎真悟隊員(27)
「ちょっと、しみたらごめんなさいね。これはちょっと病院に行きましょう、これはひどいですね」

救助活動の中でこうした単独で登山する高齢者が多く見受けられるといいます。男性は自力で歩けるということなので救助隊が補助しながら9合目の山小屋で移動し宿泊。翌日、無事に下山しました。弾丸登山対策として、静岡県は、登山道の通行時間を規制し、通行料を徴収する条例を検討しているといいます。

■山梨側「入山規制」の効果は?

今年から1日の登山客の上限を4000人に制限し、1人当たり2000円の通行料を徴収。
弾丸登山対策として、5合目のゲートを午後4時から午前3時まで閉鎖していました。その効果は?

報告・山田直喜ぶディレクター 山梨・吉田ルート5合目
「ゲート封鎖まで5分を切りました。今のところ駆け込みのような登山客はいません。このように人通りもまばらと言った感じです」

吉田ルートでガイドをしている千代さんは、入山規制によって安全面が確保されたといいます。

山岳ガイド 千代慧さん
「夜の登山客は本当に減ったことで(登山の)安全性が物凄く確保されたと思います。安全面プラス、山小屋の経済面とかも、みんなで一緒に考えていく」

県も手ごたえを感じています。

山梨県 富士山保全・観光エコシステム推進グループ 岩間勝宏推進監
「夜間の登山客なんですけれども、19時から24時の間に6合目を通過する方、去年に比べ、95.1%減少しているという状況になっています。(1日の登山者数)4000人をこれまで超えた日はございません」

■課題は「軽装登山」「分散」

一方で、課題もあるといいます。

山梨県 富士山保全・観光エコシステム推進グループ 岩間勝宏推進監
「1つは、かけ込みの登山というのがあり(ゲートを閉鎖する)時間の見直しですかね。2つ目とすると、軽装登山の問題。何か効果的な対策が打ち出せないか今後検討したい」

もう1つのポイントが登山客の分散です。

山梨側5合目の観光協会は、閉山後に通行規制される「富士スバルライン」を冬の時期も通行できるよう対策を求める要望書を提出。実現すれば、5合目が通年営業となり、来訪者の分散や経済の活性化も期待できます。

山梨県 富士山保全・観光エコシステム推進グループ 岩間勝宏推進監
「通年観光が実現できるように少しずつ対応されるんだというふうに認識している」

5合目でレストランなどを営む井出さんは…

富士山みはらし 井出雄貴さん
「冬も少なからず営業できるのであれば(オーバーツーリズムの)多少の分散につながりますし冬が閑散としてて、雇用の影響でもつながってたんですけども、地元の人たちにも少なからず影響があるんじゃないかと考えておりますね」

ただ、雪崩や閉山期間中にゲートを越える悪質な登山客などの課題も残っています。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp