「プーチンは怒り、いら立っている」民間人が巻き込まれる戦闘激化の可能性

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ロシア軍のウクライナ侵攻以降、民間人の死者は474人になったと国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)が公表しました。実際の死者数はさらに多い可能性も指摘しています。一方、CIAは、ロシア軍兵士の死者は、2000~4000人と分析。バーンズ長官は「プーチンはいま、怒り、いら立っている」として、今後、民間人が巻き込まれるような激しい攻撃が数週間行われる可能性があるとの懸念を示しました。出口の見えないこの戦争は、どこに向かっていくのでしょうか。最新の戦況を交え解説します。

■ロシア軍の95%が戦闘可能状態

井上貴博キャスター:
戦争中に出て来る情報は特に錯綜しますし、それぞれの情報に国の思惑がのっかる形になります。
アメリカ防総省高官によると、ウクライナ南部を除いておおむねこう着も、ロシア軍の95%が依然戦闘可能だということです。

いくつかのルートで「人道回廊」が設置された中で唯一安全なところがゴールになっている【スーミ~ポルタワ】のルートは、約5000人が避難したということですが、危険を感じてスーミにとどまる方ももちろん大勢いらっしゃいます。

■ロシア軍の死傷者数 実際は?

井上キャスター:
一方、ロシア軍の死傷者数を見ていきます。

▼ロシア国防省 3月2日発表
死者498人 負傷者1597人
▼ウクライナ外務省 3月8日発表
死者1万2000人(最大)

ロシアの思惑としては、国内の士気を下げないために死者数はそんなに多く発表したくないということはもちろんあるでしょう。そして、ロシアが現在、自国の軍隊の死亡者を集計できていないというような専門家の見立てもあります。

アメリカのCIAなどによる分析ではロシア軍の死者は推定値で2000人~4000人。分析と公開情報に基づいた予想のため「確度は低い」と付け加えています。

■外れた?プーチン氏の「4つの思惑」

井上キャスター:
侵攻を決断したプーチン大統領に「4つの思惑があった」とアメリカは分析しています。

1:ウクライナは弱小国
2:フランスは大統領選挙を控え、ドイツは新政権発足直後で侵攻の対応に集中できない
3:経済制裁には耐えられる
4:最小限の犠牲で迅速な勝利

CIAのバーンズ長官は「その全ての点において間違っていた」と分析しています。

またバーンズ長官は「プーチンは今怒り、いら立っていると思う。彼が強気に出て、民間人の犠牲をいとわずにウクライナ軍を潰そうとする可能性がある」として、民間人が巻き込まれるような激しい攻撃が、今後数週間行われる可能性があると懸念しています。

■英紙「この戦争は完全な失敗になるだろう」

井上キャスター:
英タイムズ紙(7日付)は旧ソ連の諜報機関(KGB)の流れをくむロシア連邦保安局(FSB)がウクライナ侵攻を分析・作成した文書の内容を報道しています。

イギリスはロシア軍の死者数は現在1万人にのぼるとみています。“主要な部隊と連絡が途絶えたため、ロシア政府が正確な人数を把握できていない可能性”があると報じています。

今後の戦況については「仮にゼレンスキー大統領が殺害されたとしても、ロシアはウクライナを占領できる見込みはないだろう」「ロシアには逃げ道がない。勝てる可能性はない、敗北に終わるだけ」というところまで踏み込んで、イギリスでは報じられています。

■「甘い戦況の予測」 今後の現実的な見立てとは?

ホラン千秋キャスター:
様々な見立てがなされていますが、どの見立てが最も現実に近いというふうに思われますか?

笹川平和財団 畔蒜泰助 主任研究員:
個人的にやはりウィリアム・バーンズCIA長官の見立てが私には一番ピンとくるというか、しっくりくるというか。彼はかつてロシア大使で、プーチン大統領をよく知っているアメリカ政権の1人ですので、この見立てはかなり現実と近いんじゃないかなと思いますね。

ホランキャスター:
バーンズ長官が話したプーチン大統領がウクライナを侵攻した4つの思惑がありましたが、その中で最もロシアにとって痛手となったのはどの部分になるんでしょうか?

畔蒜 主任研究員:
やはり、ロシア側が甘い戦況の予測を立てていたというところが大きいんだと思うんですよね。それと、西側がこれほど迅速に経済制裁を決めてくるということも、おそらくロシア側にとっては相当予想外のことだったと思いますね。

井上キャスター:
このあと“総攻撃”ということが言われていますが、その点はどうお考えですか?

畔蒜 主任研究員:
最終的にはプーチン大統領はあくまでもキエフを占領、軍事的に打倒するというところまでおそらくやりきるんだろうと。そうでないと、もはやこの戦争は“プーチン大戦”、プーチン大統領の存続をかけたものになってしまっているので、それはおそらく軍事的にはやりきるんだと思うんですね。
ただしその後、キエフに仮に傀儡政権を立てたとしても、それをどれだけ安定的にコントロールして、ウクライナを統治できるかというのはまた別の問題だということですね。

■脱水症状で子どもが死亡・・・ライフラインがない中で暮らす人々

井上キャスター:
ウクライナのゼレンスキー大統領は日々SNSなどを含めて世界にメッセージを発表していますが、8日のビデオ演説ではこう訴えました。

ゼレンスキー大統領
「(マリウポリで)脱水症状によって子どもが亡くなりました。パートナー国の皆さん聞いてください。きょう、脱水症状で子どもが亡くなった。この2022年という時代に」

ウクライナ東部のマリウポリでは、ロシア軍により食料・水の配送が意図的に妨害されていると主張。赤十字国際委員会は「何百万人もの人びとが水・電気・ガスなどがない中で暮らしている」と発表しています。

■第三者による人道支援の道は? 立ちはだかる問題

ホランキャスター:
ウクライナ国民の皆さんは本当に寒い中、何時間も歩いて避難されるということもはあると思うんです。水やガスなど、こういった部分の支援は他国はしづらい状況にあるんでしょうか?

畔蒜 主任研究員:
やはり問題は基本的に、敵国であるロシア側の善意に委ねているわけですよね。人道支援には、やはり第三者、それは国際機関なのか国なのか別にして。おそらく国際機関が一番いいんだと思うんですけども。一定の強制力を持って介入するということがないと、なかなか人道支援というのは進まないのかなと。残念ながら今、そういう状況にないということですね。

ホランキャスター:
こういった人道支援が意図的に妨害されているというような主張もあるわけですけれども、国民の皆さんが生きるために一生懸命避難したり、戦禍の中で生活を続けているという事実があると思うので、どうにか人道支援できないかなと思いますよね。

オンライン直売所「食べチョク」 秋元里奈代表:
募金とかもありますし、各企業でも人道支援を発表されてるところもありますけど、結局それが届くのかというところで、ロジの部分ですよね。結局、お金が集まっても届かないと意味がないというところで、ここの部分がどうなっていくのかすごく心配ですし。
届くのであれば支援したいと思う人はいっぱいいますし、できることはいっぱいあると思うんですが、このロジの部分がどうなっていくのかというのはすごく不安に感じます。
(09日17:00)