「戦争で考え方が変わった」日本で就職するウクライナ人学生の“就活事情”メンバーシップ型に戸惑い?

2023/02/14 に公開
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ロシアがウクライナに侵攻してからまもなく1年です。日本に避難して学生生活を送る人のなかには、そのまま就職を目指している人も少なくありません。実際の“就職事情”をのぞいてみると、会社に入った“後”に何をするか決まる日本で一般的な「メンバーシップ型」への戸惑いが浮かび上がりました。一方、「就活」の厳しさは日本人学生と同じ。競争にもさらされます。建設コンサルタント会社に内定を得たウクライナ人学生は「日本で暮らすうちに仕事に対する考え方」が変わったと話します―。


◆祖国を離れたウクライナ人学生、就職は?
日本経済大学国際部・松崎進一准教授「1週間後にようやくインターンシップが東京で始まります。みんなどんな気持ちですか?」
ウクライナ人学生「緊張しています」
松崎准教授「緊張する?やっぱりね」

福岡県太宰府市にある日本経済大学で開かれたインターンシップの説明会です。大学にはウクライナから避難してきた約70人の学生が在籍しています。

「日本のグローバル企業で働ける体験を積めます。日本語で勝負してください。英語は使わないように」

ロシアによるウクライナ侵攻からまもなく1年。祖国を離れ、福岡で学ぶウクライナ人学生にとって卒業後の課題となるのが就職です。

スコロホドヴァリリヤさん「将来、ウクライナで言語学校を作りたいと思っています。私が日本に来た目的は日本語をしっかり習得することだったので、あと数年日本で働きたいとか住みたいと思っています」

エリザベータ・ペトロヴァさん(22)はウクライナの首都・キーウ出身です。日本経済大学で学びながらオンラインで現地の試験を受け、去年6月にキーウ国立言語大学を卒業しました。


◆戦争で変わった考え方「ウクライナと日本の社会に貢献したい」
エリザベータさん「私の家から500メートルくらいにある家は、そこにミサイルが落ちて亡くなった人もいました」

去年2月24日に始まったロシアによるウクライナへの軍事侵攻。エリザベータさんは、母と兄とともにウクライナ西部の都市・リビウに避難しました。その後、大学と提携関係にあった日本経済大学が、ウクライナの学生を無償で受け入れていることを知りました。

エリザベータさん(去年3月)「私はずっと通訳者になりたくて。このチャンスを与えてくれて本当に嬉しかったですけど、家族から離れることは辛いです。日本語や経済の専門家になってウクライナに帰って、自分の国の経済を向上させたいと思います」

来日前には、将来の夢をこう語っていましたが、戦争が長期化し、日本で暮らすうちに仕事に対する考え方が変わってきたそうです。

エリザベータさん「戦争が始まって、ウクライナ人は戦争に勝つためにすごく頑張っていますので、私もお金を稼ぐだけじゃなくて、もっとウクライナにも日本の社会にも貢献したいという価値観が身についた」


◆仕事に対する考え方に“ギャップ”募る不安
日本で就職することを決意したエリザベータさん。就職活動は思うようには進みませんでした。

松崎准教授「卒業をみんな勝ち取って、就職活動を始めたのが7月だったんですよ。7月といったら、普通、日本の学生は留学生も含め85%が内定をもらっている状況です。そのなかで就職活動を始めないといけなかった。いろいろな企業にアプローチしたけど、充足しています、もう必要ありませんという答えがほとんどでした」

松崎准教授は、企業に電話やメールで直談判したり、学校主催で就職セミナーを開催したりして採用試験にこぎつけました。面接試験の対策を進めるうちにある問題に直面します。ウクライナ人と日本人の仕事に対する考え方の違いです。


松崎准教授「すでに自分が会社で何をするかあらかじめわかっているのがヨーロッパ、ウクライナを含めたジョブ型雇用と言われるものです。日本の雇用スタイルは、メンバーシップ型雇用といいます。入社するまで、入社して研修を経るまで自分が企業でどの部署に配属されて、どんな仕事をするのかわからないことに一種の不安を覚えているウクライナ人学生は多いと思います」


◆建設コンサルの“開発支援”企業側は「情熱」に期待
エリザベータさん「難しかったです。ウクライナは就職活動ということはあまりないんです。みんなは大学を卒業して仕事を探し始めるけど、日本はみんな3年生の頃からすごく真面目な感じで仕事を探すので少し緊張感とかありました」

11月、なんとか内定が決まりました。東京の総合建設コンサルタント会社で、外国の開発を支援するコンサルタント業務などを行っています。

エリザベータさん「すごく嬉しいですね。家族のみんなは、私のことをいつも応援しています。喜んでくれました」

入社後は、海外事業部の営業部門で働くことが決まっています。企業側もウクライナ出身のエリザベータさんに期待しています。

八千代エンジニヤリング海外事業部・藤井克巳執行役員「ウクライナは非常に厳しい状況におかれ、国内のインフラはかなりやられている。海外支援に熱い情熱がなければ務まらない仕事だと思っています。彼女もそういった情熱を持ち始めているんではないか、その意味ではウクライナだけでなく他の国でもしっかりやっていけると期待していす」

エリザベータさん「一緒に働いてい...