認知症のリアル若年性認知症患者の今「できることに目を向けて」

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9月21日は世界アルツハイマーデーです。
65歳以上の5人に1人が認知症で、患者数は増加の一途をたどっていて他人事ではありません。

宇城市三角町の直江満志さん、58歳。
普段は必ず、ジーパンに赤いポロシャツを着ています。徘徊しても直ぐに見つけることができるようにです。
(満志さんの妻・淳子さん)「全部自分の事はできません。だから朝起きておしっことかも今日はそこにしてました。あーっと思って今までに無かったんですけど」
「なんで俺がこんな事になったんだろうかと分からんと認知症って何って言ったけん、多分本人が一番訳分からん状態なんじゃないかなって」

直江さんが認知症を発症したの52歳の頃でした。
建設業を営んでいた直江さん、真面目で曲がった事が大嫌いな真っすぐな性格でした。

(満志さんの妻・淳子さん)「家族の事をいつも思っていたと思うんですよね。口数が少ない人だったのでおしゃべりではなかったので喋れる時に喋っとかんと知らんよと言ったら、本当に喋れなくなっちゃった」
「どうぞご飯食べて。こっちこっち、ちがうここ来て、ここ。ご飯どうぞ」

長年連れ添った妻の淳子さんとも今は上手く会話する事ができません。
最初に異変を感じたのは7年前の息子の結婚式、スピーチの練習をしている時でした。

(満志さんの妻・淳子さん)「覚えきらん、覚えきらんと言っていたので、『いやいや経験ないけん緊張するのは当り前よ』と言っていて、でも当日、やっぱり本当にひどかったんですよね、後から思ったらひどかったなって」
仕事ができなくなり、簡単な家事ができなくなり、1人でお風呂に入れなくなり、日を追うごとに症状は進行しています。

(満志さんの妻・淳子さん)「一昨年くらいからじわじわと目に見えてできなくなるんじゃなくて、そういえばできなくなっているねとかそんな感じ」

高齢化が進む日本。
団塊の世代が全て75歳以上の後期高齢者となる2025年には675万人前後が認知症の患者となる推計が出されています。
中でも65歳未満での発症を若年性認知症と呼び、全国に3万5000人以上の患者がいます。
男性が多いのが特徴です。課題の一つが仕事を継続する事の難しさからくる経済的問題です。

(満志さんの妻・淳子さん)「一般に言う夫の年齢になると働き盛りというか58だと役職もだんだんちょっとずつ上がりみいたな。給料もそこそこ上がっていきみたいな」

淳子さんも介護のため仕事を変え、世帯年収は3分の1まで落ちました。
この日、直江さん夫婦が参加したのは、若年性認知症患者とその家族が集う会。ともに体を動かしながら、交流を楽しみます。

(満志さんの妻・淳子さん)「行き先があるっていうのは凄く良いところだと思っていて、ちょっと遠いんですけれども頑張って来ています。話すだけで楽になる。うんうん、そうそう、分かる。そういう事あるよと自分だけじゃないんだと共有できる」同じ悩みを持つ人たちとともにできない事ではなく、できる事に目を向ける事で前向きになれると言います。
この日参加していた50代の町村さん(仮名)は、今年2月に認知症と診断されました。
(町村さん)「55歳の時に銀行を退職して、その後からちょっといろんなものを忘れるようになって」
(町村さん夫婦)「そんなはずは無いというのがありましたね。間違いであって欲しいという風にも思いました。将来の不安がとてもありまして、今後どうなるのかなと、そんな不安を抱えながら今生きているところです。いつどのように症状が進行していくかへの不安」
(町村さん)「新しい薬が出ると言うのはニュースで聞いていたので、使ってみたいなという風に思っています」

8月、その症状の進行スピードを低下させる初めての薬が厚生労働省の専門部会で製造販売の承認が了承されました。
新薬のレカネマブ。認知症の原因の約7割を占めるアルツハイマー病の患者の脳にたまるアミロイドβという異常なたんぱく質を取り除く事で症状の進行を抑える事が期待されています。

(東京大学 岩坪教授)「今まではアルツハイマー病で、例えば足りなくなった脳内の物質を補う症状を改善する対症療法しか薬が無かったわけですね。レカネマブは初めてアルツハイマー病が進んでいくメカニズムそのものに働きかけて、病気自体が進行していく速度を抑える」

対象は認知症の初期段階や認知症になる前の軽度認知障害の人で、治験では1年半後の認知機能の低下が27.1%抑えられました。
これまでに無い画期的な薬ですが、認知症を根本的に治すのではなく、あくまで悪化を前提に進行を遅れさせるものです。

(東京大学 岩坪教授)「薬に頼らないような生活習慣の改善とそれから、リスクがはっきり上がってきた場合には、的確な薬による予防、こういったものが車の両輪になって進むんじゃないのかなと期待されています」