女性の発達障害と母親との関係、ジレンマ、問題点 #早稲田メンタルクリニック #精神科医 #益田裕介

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01:24 母親自身の問題
04:55 子どもへの影響

本日は「発達障害の女性と母」というテーマでお話します。

発達障害の女性で、お母さんとの関係で悩んでいる方がたくさんいらっしゃいます。
特殊な親子関係で、特殊な問題をはらんでいることがとても多くあります。

発達障害と診断して薬を出して終わりというものではなく、人間関係、母親との問題など色々と語りあったりします。
毒親ということが話題になるのも、発達障害の親子関係の特徴です。
全てがそうというわけではありませんが、話題に上ることが多いです。

今回は、僕が考える「発達障害の女性と母親との関係」を、網羅的というよりは思いつくままにホワイトボードに書き記しました。
それを皆さんと共有できたらなと思います。

■母親自身の問題

僕がよく確認するのは「母親の問題」を特定するということです。

本人の問題や母親と本人の関係性の問題ではなく、そもそも母親自身には問題がないんですか、ということを確認します。
父親もしくは母親がASDかADHDだということは結構あります。

発達障害は大きく分けて、ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如・多動症)、LD(学習障害)
の3つです。
ASDとADHDは合併していることが多いです。
なので、僕は発達障害というとASDとADHDを併せ持ったものとして考えています。
 
身長が高い両親から身長が高い子どもが産まれるように、スポーツ選手の親から運動神経の良い子どもが産まれるように、ASDとADHDが発現する際の特性も似ています。
親が持っているものを引き継ぐことが多いです。

ただ平均回帰の法則というものもあり、両親がスポーツ選手であれば子どもは運動神経が良くてもプロになるかどうかはわかりません。トップアスリートになることは珍しいです。
同様に、両親が優れていても子どもはその上を行くのではなく、平均に近付くことが多いです。

親が発達障害がひどくても子どもは真ん中に寄ることがあり、逆に親がグレーであっても子どもはちょっと上の方へ行くことがあります。
運動神経の良い両親からプロが生まれるという形です。

やはり関連はありますので、両親のどちらかが発達障害の場合もあれば両方が発達障害の場合もあります。

父親となぜ結婚したのか、ということもポイントです。
父親が発達障害の場合、なぜ母親はその男性を選んだのだろう、ということは注目のポイントです。

例えば母親が不安が強い人で気分が安定しない人であった場合、発達障害の父親は自閉的であるがゆえにあまり気分のアップダウンがありません。
だから世の中に動じない人だと思い頼りがいがあるように見えて結婚することもあれば、お母さんが自己中心的な場合、周りの人は付き合い切れないけれど、発達障害の父親は付いてきてくれたなどパターンは色々あります。
母親自身がなぜその人と結婚したのか、なぜそういう人を選んだのか、ということは考える上で重要だったりします。

もちろん結婚するまでは全然分からなかったということ、恋は盲目みたいなこともあります。
それでも考える必要はあるなと思います。

■子どもへの影響

それは母親の問題として、子どもに悪影響が出ていることが当然あります。親子関係も人間関係です。
どこかにある人間関係は親子関係という人間関係でも反復されるので、そういうことは考えます。

また、世代ギャップかもしれませんが、無理解なパターンもあります。
母親が「発達障害はない」「精神科なんてヤブだ」「精神疾患なんて存在しない」と言うパターンもあります。
努力が足りないとどんどん教え込んで、教育的な虐待になってしまうパターンもあります。

これが、何も考えずに厳しく教えている親もいれば、母親は母親で悩んでいるパターンもあります。
どこまで親は子どもに手助けしたら良いのだろう、どこまで頑張らせたら良いのだろう、ということがわからないのです。

それは僕も良く思います。
患者さんにどこまで期待するのか、どこまで頑張らせたら良いのか、ということは難しいです。

親も普通の子と違うことに気づいているかもしれないけれど、ちょっと頑張らせれば普通の子になれるのではないか。いやいやこの子は難しいから本人のできる範囲でやっておこう、そんなに躾けなどやり過ぎたら苦しいだろう、という判断はとても難しいです。
答えはわからないのです。

平均的な子であれば放っておいても何してもそれなりに育ちます。
キャンプのカレーみたいなもので、具材を適当に切って炒めてカレールーを入れておけば美味しくなります。
しかし発達障害の子どもはデリケートなので、繊細に扱わないとダメなのではという感じになってしまいますが、見極めは難しいです。
答えがわかりません。
これは別の動画でも撮っているので探してください。

父親との関係が上手く行っていないことで、子どもに愛情を注ぎ過ぎてしまい、その結果、子ども側が母親の聞き役に徹してケアをし過ぎることがあります(ヤングケアラー)。
母親のうつを助けてあげる、母子がくっつき過ぎてしまうこともあります。
子どもが母親のために生きる、母親のために聞き役になったり、母親の寂しさを解消するために努力し過ぎてしまうことがあります。

母親の怒りに敏感になる。いつ怒るのかわからない。それは本人が発達障害ゆえに母親の機嫌を読み取るのが苦手で、母親が突然怒ったような感じがしてどんどん不安になってしまうパターンもあります。

また母親自身に情緒の不安定さがあり、急にガーッと怒ったりするので、子どもがそういう環境に育った結果、不安を感じやすい子どもになってしまうパターンもあります。

逆に母子密着が強くて、いつも母親が助けてくれるのに「どうして助けてくれないの」という形で横柄な子どもに育ってしまうパターンもあります。
その結果、母親が子どもの手足のように振る舞うパターンもあります。

発達障害の子どもは、自他の区別が弱いです。
どこまでが自分が努力すべきことで、どこまでが母親に助けてもらえることか、ということがよく分かっておらず極端です。

すごく自己犠牲的、母親の話の聞き役に徹することもあれば、逆に内弁慶で母親を自分の手足のように使う子どももいたりする、というのが発達障害の母娘関係のよく見られる特徴です。

結果的にグジャグジャになって、摂食障害や自傷行為、その他の疾患を合併することも多いです。

発達障害の母娘関係は簡単には語り切れないです。
色々なパターンがありますが、大きく分けるとこういう感じです。

治療のポイントとしては、母親自身に問題はないのか、治療や病気のことはどれくらい理解しているのか、母子密着はどういうことが起きているのか、ということを確認することが重要です。

母娘関係のパターンは、個別ではなくてそれぞれのミックスであることが多いです。
グチャグチャっとなって絡まっているのを紐解き、分けていくことが重要です。

今回は、発達障害の女性と母、というテーマでお話ししました。

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家族や精神科医によって、無理をさせられていないか?
ハードルを下げる重要性 自己啓発や成功から距離を取る理由
https://youtu.be/nZqS2OHzUzg

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『精神科医がこころの病気を解説するChとは?』
 一般の方向けに、わかりやすく、精神科診療に関するアレコレを幅広く解説しています。動画における、精神分析や哲学用語の使用法はあくまで益田独自のものであり、一般的(専門的)な定義とは異っているところもあります。僕がもっとも説明しやすいとたまたま感じる言葉を選んだだけなので、あまり学術的にとらないでいただけると嬉しいです。
                 早稲田メンタルクリニック院長 益田裕介

『自己紹介』
益田裕介
防衛医大卒。陸上自衛隊、防衛医大病院、薫風会山田病院などを経て、2018年都内で開業。専門は仕事のうつ、大人の発達障害。といいつつ、「なんでも診る」ちょっと変人よりの町医者です。
趣味は少年ジャンプとお笑い。キャンプやスキーに行きたいです。
2020年6月5日より断酒継続中。

【参考】
厚労省みんなのメンタルヘルス https://www.mhlw.go.jp/kokoro/
カプラン 臨床精神医学テキスト第3 https://www.medsi.co.jp/products/detail/3509
倫理規定について https://note.com/mentalyoutubers/n/nb130991f3fa4

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